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学園編
閑話・異界の神は神にあらず
しおりを挟む(魔王独白)
さて、何から話そうか。
まずこの世界は盟約の女神の手から離れ、異界の神によって弄ばれている。……ああ、何故、とかそういう意見は今はよしたまえ。そういうのは僕が帰った後で討論してくれ。
僕がそれに気付いたのは200回前だったか300回前だったか。この世界はある出来事を起点に繰り返している。
『聖女と王子が魔王を斃し、世界は救われました』
そう、魔王が封印、若しくは魂までぐちゃぐちゃに粉砕されて斃され、聖女とこの国の王子が婚姻によって結ばれる。所謂ハッピーエンドを迎えると巻き戻るんだ。魔王が斃されるのは必然。僕は目に見えないなにかに縛られて動く『駒』であり、世界は何度も遊べる『遊戯盤』。何万回も世界を繰り返し、ある日突然、気が狂うような時間の牢獄は次へと進み始めた。 ーーー それが『現在』だ。
女神にも、主神にだって『過去に戻る』なんてことはできない。赦されない。
では何故、こんな繰り返しが起こっているのか。
答えは異界の神だ。
僕らの知らない力で世界を切り取り、女神に気付かれぬように世界の狭間に引き込んだ。
この世界は、僕らは、複製かも知れない。
ああ、でもこの事実はあまり重要じゃない。何万回と時間を経ているんだ。もう僕らは複製される前の僕らとは全く別物へと変質してしまっている。
……えーと、なんだっけ。そう、この世界が『次』に進んだ原因…というか、きっかけか。僕はリオが最初の綻びだと思っている。
リオ・プレンダーガストという重要な『駒』の中に、異界の神にも不可侵の魂が入り込んだ。魔王の封印が解け、息子の存在を知った時にはすでに物語は破綻していた。幼な子が嬲られ、犯され、甚振られて。世界を憎むはずが。元気に。楽しそうに世界を、人生を謳歌しているんだ。異界の神もびっくりさ。なんとか『物語』を修正しようと異界の神が君にかかりきりになっている間、僕は僕の成すべき事を成した。
大体さぁ、おかしいでしょ。殺されたり封じられたりするってのがわかってるのに、なんの対策もしないなんて。
僕は魔王国を封鎖し、内政を強化した。そりゃちょっと強引に拳と魔力でお話ししたりしたけど、最終的にはみんな良い子に僕のいう事をきくようになったしね。これで勝手に戦争を起こすなんて馬鹿はいなくなった。魔王を含めてね。
自由になった僕はね、どんな事をすれば異界の神に抵触するのかを実験したんだよ。『主人公』を殺そうとしたり、周辺国を2、3国潰してみたりね。結果、異界の神は物語に沿うように状況は変えられるけれど僕には物事を強要できない。わかるかな?
異界の神は、僕らの神ではない。
僕らの創造主であった絶対神は遥か遠く、君臨するのは神ではない何か。
さあ、始めようか。協力したまえ、かつて『駒』だった者たち。
『神』とやらの、僕らを支配し、弄んだ化け物への反撃だ。
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ヴィンセントの語尾の『?』はウザいので今だけ外しました。
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