リオ・プレンダーガストはラスボスである

学園編

閑話・兄弟じゃなかった

(ティグレ視点)



『僕が君のお父さんだよ』


真っ黒い金目の、恐ろしい化け物がリオに言った。

そこから先は覚えていない。気がついたら王都屋敷の俺の部屋で寝ていて、リオが心配そうに俺を覗き込んでいた。シルキーが用意してくれた温かいお茶を飲んで、やっと体に体温が戻ってきた気がする。


あれが、リオの ーーー 父親…！？


思い出しただけで全身に鳥肌が立った。恐ろしい。気持ち悪い。あれは世界の敵。俺の中のなにかが激しく警鐘を鳴らす。……飲んだお茶を全部吐いてしまった。

リオはそんな俺に嫌な顔ひとつせずに甲斐甲斐しく口元を拭い、シーツを替え、汚れた服を寝巻きに着替えさせてくれた。

報告に行ってくる。そう言ってリオは出ていった。


………リオの、本当の父親…。


リオは否定もしなかった。俺も心のどこかで「ああ、そうか」と思っている。『贈り人』だといっても、リオの能力は突出していた。

まるで俺たちと種が違うように。

おそらく、リリアーナ様はジョッシュちちと結婚する前にはすでにリオを身籠っていた。ジョッシュは金が必要だった。それは愛人たちおれたちを養う金ではなく、遊ぶための金だったのだろうけど。先代プレンダーガスト伯爵夫妻も、娘が誰の子かわからない子供を妊娠していることを知っていた。だから身代わりを用意した。娘に「似ている髪と瞳の男を選びなさい」と言って。


………どうしよう…。


泣き出したい気持ちになって顔を覆った。

俺は、リオの『兄』じゃなかった。

俺がジョッシュ・プレンダーガストの子供だと思ってリオは拾ってくれたのに。半分だけでも血が繋がっているから。だから俺を傍に置いてくれたのに。







俺は ーーー どうしたらいいんだろう……。