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学園編
理由がわからないと尻の座りが悪いんだよ
しおりを挟む北に位置するプレンダーガストもそろそろ春が訪れるという冬の終わりの日。ラドに呼び出されて登城すると何故か四公爵と王妃様、ラドに陛下が揃って待っていた。
なにごと!?
プレンダーガストとケレスの発展とか、先日の魔物暴走の話とかした後でコホン、と王妃様が咳払いをして空気が変わった。
……あ、これ、面倒な話だ。
「プレンダーガスト侯爵、単刀直入に申しますが、貴方は花の月からモンサロ王立学園に通っていただきます」
………なんて???
「期間は1年間。もちろん従者のティグレ・プレンダーガストも同行してください」
「………理由をお聞かせ願えますか?」
「………………」
王妃様は視線を落とし、憂い顔をする。美人が困っている。これだけで前世の悪友西ノ宮なら騙されてやるんだろう。だが俺はホイホイ黙って頷くわけにはいかない。プレンダーガストもケレスも今からが領地経営の本番だ。今はまだ目新しいと話題にも上るが、これからが舵取りの難しい場面だ。現場指揮の俺が1年という長期に渡り外れることは難しい。俺一人の問題じゃあない。今や俺の肩には11万人を超える人間の命がかかっている。
たぶん、この日のために俺は2年間も好き放題させてもらった。多少は魔物狩りや反社会組織壊滅とかに手を貸したが、妨害らしい妨害も入らず、結果、異例の速さでプレンダーガストとケレスは発展した。
まるで俺に大切なものを作らせるために。
………あー、いやらしいなぁ、こういうのって。「大切なものは作るな」と前世の糞親父が言っていたのを思い出しちまった。戦になれば躊躇した一瞬が命取り。いざという時に切り捨てられないものは最初から持つな、と。
リサにセバス、屋敷の使用人たちくらいなら身軽だったんだ。そこにオズウェルが来て、ポチタマを連れて帰り、ティグレを拾った。プレンダーガストの領民たちは働き者で、ケレスの民は少し過激。王都でもアンティエーヌという友達もできて、四公爵のオッサン爺さんたちも嫌いじゃない。陛下は人が良すぎて放って置けないし、王妃様は暴走しないか心配だ。メアリーばあちゃんも癒し系すぎて危なかしいし、大公邸のアイザックさんはティグレが大変世話になった。……ラドは ーーー まあ、ラドはラドだし?
あー…あああー!もー!!
落ち着くために、深~い溜息をひとつ。何を勘違いしたのか、ラド以外が震え出したのは見なかったことにする。うん、俺は見てない。見てないったら!
「理由をお聞かせ願えますか、モンサロ王国上層部の方々」
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