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領地編2
襲撃者を襲撃
しおりを挟むラドには待機を命じられたけど、どうにもこうにも我慢ができなくなって飛び出した。天井裏に王家の影が居たからラドに伝えろと指示を出す。真っ黒なローブを着て、筋力強化を掛けて馬車を追いかける。短距離なら馬に乗るより走った方が早い。雨も降り始め、襲撃者には最高の、防衛側には最悪の場面。
追いつくと、馬車はすでに数人の襲撃者に囲まれていた。
殺す気はない。こいつら全員が『証拠』だ。でももし……万が一、メアリーばあちゃんに何かしてたら………
刀を鞘から抜かずに振り抜く。四肢の骨を全て折っておけば捕縛する必要はない。さらに魔法を詠唱できない様に柄頭を突っ込んで歯を折っておく。馬車に押し入っている男の背骨を粉砕し……メアリーばあちゃんが剣を突きつけられ、手から血を流しているのを見て
一周回って冷静になった。
……殺して良いんじゃァねえかなぁ、この外道どもは。要らねえだろ、これ。さらにウヘァ…ってなったのは襲撃者の中にエルマーがいた事だ。まあ手首掴んでバッキボキに複雑骨折させてやったが。
喚くエルマー。きょとんとするメアリーばあちゃん。こんな時にも可愛いは発動しなくて良いんだぞ、ばあちゃん…。アンティエーヌさんに加護を掛けてもらったハンカチを握らせると、ばあちゃんの手の傷は即座に癒えた。……すげえな、異世界。パネエな、聖女。
「リオちゃま?なぜここにいらっしゃるんです?」
「あぁ…んー、メアリーばあちゃん、その箱、間違えたみてェでさ?中身が違うんだわ」
「えっ……あらぁ…」
困った様に膝の上の箱を見るばあちゃん。うっかりさんね、とか本気で思ってんだろうなあ…。
喚き続けるエルマーと愉快な仲間たちを馬車の外に蹴り出して、骨を折る作業を続行。
「ぁぁぁああああぁぁぁああああ!痛えっ!痛え!なんっだよこれええええ!!リオ!!なんで!?なんっ………ぎゃあああああああ!!」
うるっせえな、オイ。もうこいつに声をかけるのもめんどくせえ。千切れねえ程度に骨を折っていくのって難しいなぁ。馬車のカーテンを毟り取り、エルマーに噛ませる。舌なんか間違って噛んだら大変だからな?あと単純に煩え。
丁寧に、丁寧に。ゆっくり踏みながら、四肢の骨を粉砕していく。『西ノ宮流・腑抜けでもできる血の出ない拷問』だ。まあ皮膚の下ではめちゃくちゃ出血しているんだが。そうこうしてると、騎士たちを従えたラドが駆けつけた。……あー…怒られる。叱責くらいで済めば良いけど……
いつも微笑をたたえている御尊顔に、憤怒を乗せて馬から降りる。あー、殴られる?あー、ああー……仕方ない。命令違反だもんなあ…。罰が悪すぎてヘラリと笑う俺の横をすり抜けて
「………っメアリー…!」
ラドはいまだに馬車の中で「あらあら、どうしましょう」と言わんばかりに困っているメアリーばあちゃんを抱きしめた。
「坊っちゃま?どうされました、坊っちゃま?」
「メアリー…メアリー……良かった…無事で、良かった……!」
「あら、まあ……泣いていらっしゃるの?あらあら…困りましたわねえ」
「…すまないっ……メアリー…!すま、ない…っ……」
………ああ、なんだ。ラドも人の子だった、ってこった。
「……リオ、ありがとう…」
「お…ぉお……」
素直すぎて怖あ!
「だがこれはこれ。命令違反は別件だ」
ヒクリ、と俺の頬が引き攣った。
ですよねー!
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