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領地編2
ティグレのふたつめのピアス
しおりを挟む新年を迎え、俺は13歳、ティグレは15歳になった。そう、モンサロ王国では誕生日に歳を取るのではなく、新年に年齢が変わる。ヒノモトでいう数え年というやつだ。わかりやすくていいと思う。
15歳、というと元服。武家なら銘刀やら武具を贈るのが慣わしだが、ティグレはあまり剣には向いていない。王都からプレンダーガストに帰ってきて、俺と一緒に鍛錬を始めたが、ウォーレンには苦笑いされ、エルマーには指をさされて笑われ、俺はティグレを守らないとと再確認した。魔法適性はあるようなので、錬金術師にたまに習いに行っている。何がいいかと思っていると、
「あ…新しい、ピアスが、欲しいんだけど……」
と顔を真っ赤にしておねだりされた。なんだよ可愛いかよ!?
となれば、新作のサフィレットだろう。
何色が良いかな?カッティングは?男だからあんまりゴテゴテしたのはなあ……とスケッチブックに書き殴っていると、職人たちが集まってくる。ティグレの成人の祝いだと言うと
「そりゃ坊んには領主様の色じゃろ」
……はい?
「桃色と金がかった白…かのう?」
えええ……あー、白百合色とか卯の花色とか、そういうの?
確かにティグレの色で作ると金茶択一だ。面白みがない。……っていうか、ティグレがブラコンなのバレてんじゃん。ふむふむ。じゃあまだ試していないデザインで、……うーん、ティグレの形の良い耳に揺れる石。……うん、良いな。そうしよう。彫金はプレンダーガストの家紋を意識して……ティグレは元服したら『プレンダーガスト』を名乗らせようと思っていた。もちろん当主にはなれないが、ちゃんと俺の兄ちゃんだと名乗って良いと思うんだ。色々と情勢も落ち着いたしな。
鏡の前でジッと自分の色合いを見る。桃色というより桜色。虹彩にはきらきらと金の粒が散っている。瞳孔と虹彩の外側が赤いのは俺自身今知った。テメェの顔に興味ねえからなァ。髪の色は白に近い金。白百合っつーか、春の縁側のお日様色だ。メアリーばあちゃん直伝のティグレのお手入れでツヤツヤサラサラ。あー、そろそろ散髪してぇなぁ…。
ぶつぶつ考えてると、職人のひとりの姐さんが
「ねね、領主様?こういうのを作ったんですけどぉ…」
もじもじしながら試作品を持ってきた。
試作品は前世でいうと『 猫睛石』だ。素晴らしい!なにこの輝き!茶金でティグレの瞳にそっくりだ!
「あの…宣伝を兼ねて、ティグレくんのピアスと対でどうですかぁ?」
お!採用!
うんうん、そうだよなあ!俺がこれをつけて歩いたら、ティグレもプレンダーガストってわかるんだよな!
と、いうことで猫睛石の自分の分も作り、ついでに色違いでポチタマや騎士たちの分も作った。姐さんには「そうじゃない!!」と涙目で叫ばれた。……なんで???
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