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領地編2
馬鹿でもできる失敗なしのフィッシング
しおりを挟むテレレッテテ!テレレッテテテテ!テレレッテテテテテテテテッテッテッテ~♪
俺の頭の中では某料理番組のオープニング曲が流れている。あの素っ裸の赤ん坊人形が野菜と一緒にクルクル回るやつだ。
毒餌に鼠が喰らい付いた。西ノ宮流『馬鹿でもできる失敗なしのフィッシング』は順調に餌が減ってきている。「じわじわと毒が効いてきた時に現れた鼠を……プチッ!と。簡単だろ?」。とても綺麗な笑顔でそう言った。怖え。
正しい情報の中に偽の情報を混ぜて全て食わせる。美味しい米に毒が入っている殺鼠剤のようなものだ。プレンダーガストの職人たちには「これから偽物の情報も流す」と事前に伝えたから察してくれたようだ。エルマーはせっせと毒餌を巣穴に運び続け、王妃様の茶会でお仲間が引っ掛かったらしい。根回し、大事。
ま、大切そうにケースに入れて、大振りの失敗ガラスをエルマーが持っていきそうな場所に置いておいたんだけどな。
今回の最大の餌は『未発表のプレンダーガストサフィレット』だ。俺は心の中で『なんちゃってサフィレット』と呼んでいる。多分、地球の作り方とは違うんだろうが、理論的にはこうだろうと言われていた中世の変色ガラスだ。
サフィレットという中世の変色ガラスは『表面プラズモン共鳴』で散乱光と透過光でガラスの色が変わって見えるという原理のものだ。プレンダーガストレッドの失敗ガラスでも変色は見られる。焼成時間が足りずに金ナノ粒子が育っていない場合だ。サフィレットは意図的にその『失敗』を成功にしたガラスだと俺は思っている。
なんちゃってサフィレットガラスは、超微量の金ナノ粒子と銀ナノ粒子、それから俺の魔力で再利用した魔石でできている。空の魔石に俺が詳細なイメージをしながら魔力を充填。そこから錬金術師に頼んでナノレベルまで粉砕。そのナノ粒子を職人たちが試行錯誤しながらガラスに混ぜ、焼成時間を細かく調整して成功した。
成功したものを、『金に糸目はつけない』と言ってくれたマクファーレン公爵へ。結婚して何年経っても妻を愛してるっていうその姿勢は嫌いじゃない。むしろ好き。だからちょっと奮発して周りを飾るガラスをおまけした。王妃様には指輪をひとつ。あれだ。ヒノモトの時代劇の「この紋所が~」ってやつ。盗ませるために用意した失敗と、本物の成功品は並べて比べれば一発で違いがわかる。
盗んだやつは絶対に見せびらかす。なんなら「プレンダーガストに直接貰った」と法螺を吹く。そこから巣穴を全滅させられないものかと思うけど……うーん、特許とか知的財産とかの概念が緩い世界なんだよなあ。
ま、今回捕まえた鼠はシャーロック公爵の実母でかなりの毒親だったらしい。「これであの色情狂を修道院にぶち込む口実ができました」とお礼の品を貰った。……なんだかなあ。
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