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領地編2

マグレーディの反抗

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「アッハッハ!そいつぁ済まなかった!」


目の前で男が陽気に笑う。男の名はメイソン。マグレーディ領のまとめ役だ。俺は髪も歯も抜け落ちたような爺さん婆さん達に囲まれてモニョモニョ拝まれている。……「ヘスティアしゃま」とか聞こえる気がするので多分、曾祖母様の信者。こええええええ!!



不毛の大地マグレーディに到着して呆然としていたところで、運悪く雨が降り始めた。不気味な荒屋でも仕方ない!と雨宿りをしようと近付くと……

ガツッと暗闇から出てきた腕に両肩を掴まれた。


「fjbhkっdklmbぐcfhmhfxhmfっxfdてtzfjkんk!!!」


叫ぶ俺。声にならない悲鳴をあげて俺に抱きつくティグレ。臨戦体制の護衛騎士達。エルマー棒立ち。っっつっかえねえなァ、オイ!!


「…ふぅごおおおぉぉぉおおぅう…!へしゅてあしゃまぁ~!!」


………ハイ???


「めがみじゃあ~!めがみしゃまがおもじょりになっちゃぁ~!!」


なんですと!?!?


………よく見ると痩せて歯が抜けた爺さんだった。ヒッ…ヒェエエエ…!脅かすなよォ!!


爺さんの一声でワラワラと集まる老人達。拝まれ、泣かれてティグレ共々、掘立て小屋に引き摺り込まれた。殺気どころか超笑顔だったから成すがままになっちまったよ…。や、や……あれだ。前世の『お年寄りには優しく親切に!』っていうのがチラついて乱暴に振り解けないし、ティグレは目をギュッと瞑って俺に抱きついたまま。あと護衛はなんかオロオロしてた。エルマーは未だ棒立ち。……あれ?こいつ立ったまま気絶してねえ?

掘立て小屋の中は綺麗に整頓されていて、さらに地下があった。……マジで?そして地下にいたのがこのメイソンだった。


「定期的に税払えっていうお役人が来るもんでよ。払うもんなんかなーんもありやしねえよ!ってことで、爺さん達に襤褸着せて偵察に行かせるんだよ」

「へすてぃあしゃまをうぼうたやつらにゃあてつかいちめえでってわたしゅもんかぁ」


うん、なに言ってるかわかんない。でも大体分かるぞ。だって信者だもんなあ。(狂)が付くやつ。


不毛の大地マグレーディ。見事にレジスタンスの根城になってました。

まあなんだ。反乱組織レジスタンスっつっても税金払わないとかいうしょぼいやつ。曾祖母様を奪われた領民たちは農耕を放棄した。国の役人も追い払った。草や低木で隠れたところに自分たちが食っていけるだけの畑を作り、獣を狩り、女神ヘスティアの帰りを待った。悍ましい怪談話を吟遊詩人に扮した信者なかまが全国を回って吹聴し、見る間に領地は耕作放棄地ばかりとなった。実際、領主による虐殺はあったらしいし。狂信者の勢いと頑なさに他領に逃げ出すものも多かった。ぱっと見、オッサン含む若者が数人しかいないのはそういうことだ。

「これは最近わかった話なんだけど…」っていうのは怪談の定石だよな。クッソ!セバスめ!!帰ったらリサに言いつけてやる!!!



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