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領地編2
マグレーディの悲劇
しおりを挟む無事に転移門が復活したので、元プレンダーガスト侯爵領に行くことにした。王家直轄領になったその土地の名はマグレーディ。『不毛の大地』とはよく付けたもんだ。めっちゃ悪意。
そう思っていた。
「………なぁにぃこれぇ…」
見渡す限りの荒野。草原。荒地。掘立て小屋はあるが民家らしきものも見当たらない。領民皆無。……おかしくねぇ!?曾祖父様の治めていた領地は豊かな農耕地だと聞いていたのに…!
「リオ、俺もセバスさんに聞いたばかりなんだけど…」
ティグレが教えてくれた元プレンダーガスト侯爵領の顛末。
曾祖父様と曾祖母様は、大恋愛にの後に国際結婚をした。北方諸国から嫁いできた、女神のように美しい領主の息子の妻。領民との距離も近く、気さくで優しく、誠実な息子夫婦。領民たちは熱狂した。領主の息子の妻 ーーー ヘスティア様は女神の化身!…と。
……なんで?
それなのに、結婚と出産の報告に向かった王都で起こった国王の暴挙。人妻であり、一児の母であるヘスティアを妾として差し出せ、と。領主の息子は当然拒否した。領主夫婦も憤った。当然だと領民たちは拳を振り上げた。だがそこで話は終わらなかったのだ。
まあ当然だよな?
国王のさらなる暴挙。『君主の望むものを献上しなかった罪』として、プレンダーガストは侯爵家から伯爵家へと降爵。さらに領地は豊かなプレンダーガスト領から、不毛の大地マグレーディへ。そこで土地自体の名前の交換も行われたらしい。
クソだな、国王。
領地替えされてからの苦難の歴史は俺も習った。砂漠に近いプレンダーガストは食べ物はほぼ育たず、慢性的な飢饉状態。それでも領主たちは自らの貯蓄を切り崩しながら領民を支え ーーー 今に至る。
死ね国王。あ、もう死んでるか。
問題だったのは元プレンダーガスト。名をマグレーディと改められたとが呪いのように不作が続いた。だが当時の領主は前領主のように「不作なんだから税は軽くしよう」なんて言ってやる甘っちょろい善人ではない。逆に締め上げて一揆が起こる。「女神に不敬を働き、我らが領主を追い出し死に追いやった」「女神ヘスティアの祟りである」「ヘスティア様を返せ」「神は我らと共にあり」。そう言って鍬や鋤、草刈り鎌を手に反乱を起こした農民たちは吊るされた。
まあ当たり前だろう。この辺は異世界もヒノモトも変わんねえなァ…。
ここからが、この話の怪談じみてくるところだ。一度に大量の領民を殺した新領主たちは頭の捻子が捻じ切れちまった。なにも罪を犯していない領民たちまで捕らえ、拷問の限りを尽くして1人残らず吊るした。危機を感じて農地を捨て、動けない老人を捨て、足手纏いの赤子を食い、這う這うの体で逃げ出した領民を捕らえて噴水にある広場で処刑した。時間をかけてゆっくりと、残虐の限りを尽くして殺された領民たちの血で広場は真っ赤に染まり、それは『赤の広場』と呼ばれる。そうして終わったかに見えた狂乱は、領主たちが挙って罹患した奇病によって本当の幕を閉じた。連絡が途絶えたことを不審に思った王都の役人が到着した時には、領主たちは痩せ細り、口から真っ黒い土を吐きながら絶命していた。
怖っっっっえええええええええ!!チビるぞ、マジで!?盛ってねえ!?盛ってるよなセバスゥ!?作り話って言えよオオオオオオオオオオ!!!
「……この話は『王家の罪』として最近まで隠されていたらしいよ」
待って…待って陛下!!なんっでそういう曰く付きの場所を下賜したかなあッ!!??
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