【完結】リオ・プレンダーガストはラスボスである

とうや

文字の大きさ
上 下
40 / 160
王都編

ハイかイエスか御意だろう!!

しおりを挟む


ニップルピアスを納品した翌朝、ラドがニッコニコでやってきた。足取りは軽く、肌艶が良く、口元はだらしなくない程度に緩み、口調は花が咲き、なんというかこう……むかつくほどに『幸せオーラ♡』が出ている。


「明日の披露目式はこれを身に付けなさい。それから、ピアスは最高の出来でした。朝まで盛り上がりました。あんなに可愛い弟は久しぶりでしたよ。はぁ…最高でした…!あ、弟は今日はまだ寝てます。………聞きたいです?」

「左様ですか。全くもって聞きたくありません」

「くふふ…そう言わずに。幸せのお裾分けですよ」

「不要です」


オッサン2人の猥談とか、いっらねえええええええ!!


「そうです?残念ですね。うちの弟は可愛いのに…」

「ンンッ!…あー、はい。衣装。衣装ですね!恐縮です!ありがとうございます!!」


ラドは明日の披露目式に着る服を仕立ててくれたらしい。


大公家うちの執事や乳母が張り切りまして。どうやって調べたのか貴方の体のサイズも調査済みだったようですよ。あの人たち、貴方を本気で囲い込むつもりですね」


色々と怖っええええええ!!

あー、でもそっか。ラドは大公家の人たちとは良好な関係なのか。うんうん、安地大事。

受け取った衣装をティグレに渡す。……エルマー・ゲージはまだ来ていない。あいつ何やってんだ!?今日から配属だよな?配属初日に連絡もなく遅刻欠勤とか、ヒノモトの大企業なら即懲戒免職クビ、軍なら第一級前線配置だ。でもまあ、あいつが居ないからラドもエロ話しようとしてるんだろうし。


「あ、そうだ。今朝城から食材届きました。ありがとうございます」

「ああ…あれは王妃殿下もあれこれ指示をしていたようだね」


城から届けられた食材は、醤油や味噌、塩、胡椒、鰹節や乾燥昆布などといった調味料に加え、ベーコン、玉子、野菜、焼きたてのパンと至れり尽くせりだった。欲を言うと米だ。白米が食べたい。玄米でも良い。お孫ちゃん……王妃様の采配もだが、ティグレが厨房の使用人たちと仲良くなったのも良かったのだろう。朝食!非常に!美味かった!!


「いやぁ~!遅れた遅れたー!」


乱れた格好をしてエルマーが現れる。その弛みきった態度にイラッとするが、こういうのは注意するだけ無駄だ。


「……エルマー・ゲージ。君は本日からリオ・プレンダーガストの護衛に任命したはずだが?」

「あっ…殿下…!えーと…ええ、ちょっと寝坊して、ですね…?」


その胸元のキスマークは一体なんだろう。前世の悪友、西ノ宮という男は女にも男にもだらしない阿呆だったが、時間に遅れたことはなかった。自分に非がある場合には言い訳もしなかった。ティグレに至っては時間前に行動を始め、俺の先回りをする優秀さだ。本人の生まれ持った気質に加え、リサとセバスの教育の賜物だろう。……むう。比較をしてはいけない。だがこれは……


「……ラド殿下、彼は私の護衛に向いていないのでは?」

「えっ…!?こ、困るよ~!親父に言われてるんだって!」

「なら何故、時間に遅れる?お前の私生活に口は出さないが、『仕事』をするにはまだ早いのでは?」


トン、とエルマーの首のキスマークのあたりを指で叩く。もちろん俺の首だが。


「え~?なに?嫉妬?」

「私が?何に対して?お前に?……ハァ………二度とは言わない。私の『護衛』をやりたかったら耳の穴かっぽじってよーく聞け?時間に遅れるな。乱れた服装でウロウロするな。言い訳をするな。最後に。目上の者の会話に首を突っ込むな。……以上だ。返事は?」

「えー……こえぇな、もー………うー、うん。わかったよ…」

「………」


イラァッとする。ここはハイかイエスか御意だろう!!





しおりを挟む
感想 76

あなたにおすすめの小説

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

その捕虜は牢屋から離れたくない

さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。 というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

転生先がヒロインに恋する悪役令息のモブ婚約者だったので、推しの為に身を引こうと思います

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【だって、私はただのモブですから】 10歳になったある日のこと。「婚約者」として現れた少年を見て思い出した。彼はヒロインに恋するも報われない悪役令息で、私の推しだった。そして私は名も無いモブ婚約者。ゲームのストーリー通りに進めば、彼と共に私も破滅まっしぐら。それを防ぐにはヒロインと彼が結ばれるしか無い。そこで私はゲームの知識を利用して、彼とヒロインとの仲を取り持つことにした―― ※他サイトでも投稿中

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

転生したけどやり直す前に終わった【加筆版】

リトルグラス
BL
 人生を無気力に無意味に生きた、負け組男がナーロッパ的世界観に転生した。  転生モノ小説を読みながら「俺だってやり直せるなら、今度こそ頑張るのにな」と、思いながら最期を迎えた前世を思い出し「今度は人生を成功させる」と転生した男、アイザックは子供時代から努力を重ねた。  しかし、アイザックは成人の直前で家族を処刑され、平民落ちにされ、すべてを失った状態で追放された。  ろくなチートもなく、あるのは子供時代の努力の結果だけ。ともに追放された子ども達を抱えてアイザックは南の港町を目指す── ***  第11回BL小説大賞にエントリーするために修正と加筆を加え、作者のつぶやきは削除しました。(23'10'20) **

処理中です...