【完結】リオ・プレンダーガストはラスボスである

とうや

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王都編

閑話・吾輩は犬である

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(ポチ視点)


吾輩は犬である。名前はポチ。え?フェンリル?断じて違う!吾輩は犬である!ご主人様が犬と言ったから犬なのである!!

吾輩とご主人の出会いは、あの赤く燃ゆる火のような夕暮れ時の……え?いらない?なんと!あの『どらまてぃっく』な出会いを知りたくない…と?う…ぅうむ、まあよい。食おうとした翼竜ワイバーンに逃げられ、あの日、とにかく吾輩は腹が減っていた。だがどれもこれも食い出のなさそうなかすばかり。そんな時にご主人に出会った。その時の吾輩は愚かにも「美味そうだ」と歓喜した。そうであろう。あの極上の容姿いれものは幼く柔らかそうで、魂は光の色をしていた。何度も『界』を行き来し、磨き抜かれた魂だ。

「いただきます!」

歓喜した吾輩はそう神へ祈りを捧げ、ご主人を食おうとした。なのに主人は……吾輩の鼻っ柱を拳でブン殴り、眉間へ踵をめり込ませていた。訳がわからず倒れ込む吾輩。上がる歓声。


「可愛いなァ!俺、犬も欲しかったんだよ!んー…ポチ!お前はポチにしよう!」


わしゃわしゃと乱暴に掻き乱される毛並み。太陽のような笑顔。高鳴る鼓動。色付く世界!


吾輩は【神狼フローズヴィトニル】ではなく『ポチ』になった。ご主人の巣に連れて行ってもらうと ーーー 


「ニャニャ!フローズヴィトニルじゃニャいかニャ?」


すでに先住の下僕ペットがいた。な、ななな……なにゆえ嘘吐きで性悪で悪名高き【妖精猫カラバ侯爵】が…!!??


「ニャはーん?お前もご主人に惚れて付いてきちゃったニャ?押しかけペットニャン?」

『いや、吾輩は調教テイムして頂いて此処にるが?』

「ニャッ???はうぁ!?う…ぅぅぅうううう…嘘付くんじゃニャアニャン!ご主人は猫派ニャ!」

『ご主人は「犬欲しかった」と…(ドヤァ)』

「ひ…酷いニャン!オイラというものがありニャがら!!でもオイラが一番ニャン!第一夫人ニャン!正妻ニャ!!」

『………というかカラバの。おぬしその「ニャ」とかいう気持ち悪い口調は如何したのだ…?『とれぇどまぁく』の長靴と飾り帽子はどうした?』

「……ご主人はオイラが可愛い普通の猫ちゃんだって思ってるニャ。だから長靴も帽子も袋も、過去の思い出おとこは全部捨てて新しい思い出をご主人と作るニャン♡……だからテメェも余計なことご主人に吹き込むんじゃねえぞ…?」


無駄に媚びた甘い声から一変。最後の言葉は非常にドスがきいていてチビるかと思った。正直ちょっと出た…。


「お前は犬で、オイラは猫ニャン!はい、復唱ぅ!」

『吾輩は犬で、おぬしは猫!』

「はいニャ!もーいっかいニャン!」

『吾輩は犬で、おぬしは猫!』

「声が小さいニャッ!もーいっかい!!」

『吾輩は犬で、おぬしはね……』


「こらぁ!ポチ!タマ!五月蝿いぞ!ケンカしない!!」


「はいニャァ~!」

『ぎょ…御意に!』







吾輩は犬である。



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