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王都編

ええ…食欲のほう?

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非常に不本意だがエルマー・ゲージが専属護衛になった。

なーんか嫌なんだよなー、こいつ。舐めてるっつーか、甘ったれてるっつーか……。まあ中坊なら仕方ないのか?反抗期真っ盛りってやつ?えーと、元部下が言っていた。なんて言ったけ?『ちゅうにびょう』?中等部2年生くらいの少年少女が『自分は特別な存在なんだ』って思い込む黒歴史。高等部くらいになってその頃の妄想ノートとか本棚の奥から出てくると、泣くほど恥ずかしくて軽く 愧死きしできるやつ。

前世の俺もやった。

中等部の頃は実家関係で自由が全くなくて、俺の秘められた力が顕現したら親父をボコる、とか、夕陽と共に妖魔大戦が始まって俺だけがそれに気付く…とか、伝説の維新志士の叔父さんに並ぶ俺……とか…。そのノートはすぐさま庭で燃やしたけど。今考えても恥ずかしい。あのノートの他に残ってねぇだろうな……実家のやつに見られてたら舌噛んで死ぬぞ?まじで。

エルマーは明日から正式配属。一旦、御前を辞した。……っていうかさあ!王兄じょうしに向かってあれはどうなんだ!?「じゃ、しつれいしまぁーっす!」って……駄目だ。絶対に俺とは合わない。ティグレも眉間に皺寄せてたし。


エルマーあれの人事は貴方に任せます。解雇も取り立ても貴方が決めなさい。ああ、それと、王都まで貴方を護衛した騎士ですが、生き残った10名全てが貴方のもとに付きたがっています。それも『お詫び』として差し上げましょう」

「………御意…」


さすが腹黒宰相。どこからどこまでが仕込みなんだ。あの冷た~い目の使用人や護衛たちは確実に『エルマーを護衛にすることを呑ませる』ために集められた。わざわざ俺に悪感情を持っている人間をピックアップして。ではエルマーを俺の護衛にすることによってラドにもたらされるメリットはなんだ?まさか本気で俺に配慮して『同年代の転生者』を付けた……わけねぇよなあ…。


「ごしゅじーん♡」

「おっと…どうした、タマ?ポチも」


探索を終えたのか、葉っぱをいっぱい体に塗したポチタマが帰ってきた。タマもポチもご機嫌で、目を爛々と輝かせている。


「ねね、ご主人!、ご主人のものになるのニャン?」

「ああ…エルマーか?まあ……そうかな?」


人事権だけどな。


「いいニャ!いいニャア!あれ、いらなくなったら欲しいニャン!」

「ガァウ!」


む?気に入ったのか?まあ転生者おくりびとだしな。ちょっと寂しいがそういうことも……


「食べたいニャ!美味しそうだニャン!ご主人は食べたらなくなるから絶対イヤニャけど、あれなら食べても良さそうだニャン♡」

「バウバウッ」


ええ…食欲のほう…?どこの世界も、あやかしは妖かぁ…。





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