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王都編
閑話・情緒をめちゃくちゃにしてくる俺の主人
しおりを挟む(ティグレ視点)
正直、浮かれていた。日常を離れて違う土地に行って帰る。『旅行』というらしい。
リオと2人で行く旅行。ずっとリオと一緒だし、ガタガタ揺れる馬車にリオが辛そうにしてから、膝に乗せて抱っこした。リオは良い匂いで柔らかくて。なんだかすごく幸せで。四六時中頭の中がポーッとした。揺れる馬車で、リオの小さなお尻が俺の股間あたりで小刻みに動く。その日の夜、リオに触ってキスをする夢を見た。変な夢…。
起きたら、なんだか粘った液で下着が汚れていて。
病気だ!どうしよう…!ってリオに言ったらからからと笑われた。
「そりゃ夢精だ。大丈夫大丈夫、下着洗ってこい」
これが……そうなのか………。
セバスさんから「お前ももうすぐだ」って聞いてはいた。その辺のエッチなお姉さんと抱き合う夢でも見たら『大人』になるさ、と。小さな盤に水魔法で水を入れ、下着を洗う。こそこそと馬車の裏で洗濯していたのに、護衛騎士の人たちに見つかって「若いなあ」って笑われた。
「下着を汚さないように、夜、こうやって擦ってスッキリしてから寝るんだよ」
そう言って太い棒を上下に擦る仕草をした。どっと笑いが起こる。「女が居ねえからってエグい猥談聞かせんじゃねえよ、坊ちゃんもいるんだしさあ」そうゲラゲラ笑っていた。よくわからない…。でも、なんだかとても恥ずかしくて嫌だった。
その日から、リオが膝に乗っていると股間がむずむずするようになった。リオの柔らかいお尻が、布越しにあそこを擦る。良い匂いがする。頭の芯がトロトロと蕩けて、夢の中みたいにリオに口吸いしたくなる。キスして、触って、それから……触って欲しい。
夜、リオが寝た頃に、あそこを擦って何回か出してから寝るようになった。そうすれば昼間は辛くない。リオの寝顔を見ながら擦ると、そんなに時間がかからず出すことができた。すごく…気持ち良くて、声を噛み殺し、荒い息を隠す。どうしようもなく後ろめたい。誰にも知られたくない。綺麗なリオを汚してしまったような、嫌な感じ。それでいて、リオを想いながら固くなったあそこを擦る。
そんな悪いことをしていたから、罰が当たったのかもしれない。
それは突然のことだった。「今日の昼前くらいには王都に着きますよ」。そう言われていたのに。
目の前が真っ赤になって、鉄の匂いがした。……血だ。馬車の小窓の外は、恐ろしい光景が広がっていた。さっきまで言葉を交わしていた護衛騎士が、脳を撒き散らして倒れ込む。体が震え出して止まらない。
逃げなきゃ…!!
早くリオを連れて、ここから逃げなきゃ!!死にたくない!そう思うのに、体が縮こまってうまく動けない。息ができない…!!
なのにリオは。
まるで慣れたように「俺が出たらすぐに鍵をかけろ」とか言う。えっ…どういうこと!?なんで!?か…かぎ…!?
そこからは、一方的な蹂躙。
俺はリオを子供だと思っていた。大人びていても2歳年下。7歳くらいまでろくに食事が取れなくて、今も忙しすぎて食べたり食べなかったりで、年齢よりずっと小さい体。けれどリオは、小さな体を真っ赤な返り血で染めて、黒い襲撃者たちを1人残らず斬り捨てた。
俺は ーーー 馬車の中から動けずにそれを見ているだけだった。
なんて無様な。
自分が情けなくって悔しくて、リオが生きていたことが嬉しくて、リオが死んでしまうかもって思ったら怖くて、リオに置いて行かれたことが悲しくて。
それなのに、リオが笑う。
なんでもないことのように。いつもの調子で。
………強くなるしかない。
リオに置いて行かれないように。危ない場所でもついていけるように。いざとなったらリオを抱えて逃げれるように。リオより強くなる……のは、多分ちょっと無理だろうけど。
王都に入ってからも、リオは俺の情緒をめちゃくちゃにしてくる。
王兄殿下相手にお詫びと称して屋敷を要求したり。
騎士団長を含む王宮騎士たちをボロボロになるまで素手で殴ったり。
俺の作ったハムサンドを俺の手から食べてドキドキさせたり。
聖女様がお見舞いに来たのに爆睡したままだったり。
王宮騎士団員たちに土下座されてキラキラした目で見られたり。
今後もリオはきっと、俺の情緒をめちゃくちゃにしてくるんだろう。それがちょっと楽しみになってきてる俺は、少しどこかおかしいのかもしれない。
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