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王都編
閑話・リオ・プレンダーガストはラスボスである
しおりを挟む(王妃視点)
この世界は『めいく♡じぇしか~イケメン達とイケナイことしてたら世界を救っちゃいました⭐︎~』の世界だ。クソダサタイトルだがストーリーは重厚で絵師は神。スチルはエロくて、女性向け18禁乙女ゲームにも関わらず、男性向けの薄い本が多数生産された伝説のタイトル。シミュレーションADVのエロだけかと思いきや、RPGパートでは涙あり、笑いあり、ポロリありの『やり込み型ゲーム』だ。
その『めいじぇ』の最大にして最後の敵、リオ・プレンダーガスト。
美しい容姿と哀しい過去で、攻略対象を寄せつけもせず、ぶっちぎりで人気投票の1位を獲得した美貌の悪役だ。ADVパートでは主人公ジェシカを凌辱したり、攻略対象を寝取ったりと、ありとあらゆる『エロ』でプレーヤーを楽しませ、RPGパートでは『死にゲー』と言われるほどチート級の強敵。
その、リオ・プレンダーガストが、今、目の前にいる。
素手でバシネットを殴り砕き、ブレストプレートやバッグプレートは殴られすぎて原型をとどめていない。ボロボロの銀のフルプレートの騎士団員達は纏めて端に追いやられ、手当を受けながら低く呻いている。
「おーい、寝るな寝るな、オッサン?ほら!おっはよー!起きろぉ♪」
ガツン!
蹴り上げる。すでに地に伏して、血塗れの騎士団長を。
「ねえねえ?もう終わり?そんなことないよなぁ?だって『最強の王国騎士』だもの!『リリアーナ』の『子供』は嘘吐きで妄想癖があって、暗殺者を殺したとか言っちゃう虚言癖もあるんだったよなあ?だったら痛くないよな?こんなの金で買収できちゃうやつぅ?ほらほら、まだ魔獣なんか召喚んでないし?いけるよな?まだ頑張れるよなあ?なあ!なあっ!!」
ガツン!
踏み付ける。王国騎士の誇りである鎧を。王国最強の証である『赤赫の重鎧』を。王国最強の騎士団長を。
「おーい?おっさぁーん?早く立ち上がれってばぁ~もー…」
無邪気な声。それが今は、背筋が凍るほど恐ろしい。
「……なあ?馬鹿にすンのも大概にしとけよオッサン。今、立ち上がれなきゃ、オメェの根性ぁ、死んだ護衛騎士以下だぜ」
ガンッ!!
蹴り上げる。風船のように。あるいはボールのように、騎士団長の体が宙を舞う。ガシャン!と耳障りな音をたてて、それは落下した。
「………はあ。根性無しのタマ無しかよカスが。おーい!聖女のおじょーさーん!出番ですよぉー!」
「ヒッ…!!……あ、あ…ああ……ま、まだ、やるんです、か…!?も…もう、合計で12回目………!」
「うん!」
にこにこと。天使のように無邪気に化け物が笑う。
「ねえ聖女のお姉さん?あのね、このおじさんはね、勇敢に戦って死んだ護衛のおじさんたちと御者のおじさん、すっごい怪我したのに頑張って生き残った護衛のおじさん達を馬鹿にしたんだ。絶望して自ら死んだ女を貶めた。さも自分は高尚な人間ですぅって顔して。……おねーさん、僕ねえ、そういう根性の曲がったクソが、骸に集る 埋葬虫以上に大っ嫌い!だからねえ?何度でも治療してあげてね!はー!異世界、最高っ!治癒魔法、最高おっ!」
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では ーーー これは『誰』…!?
ああ、でも……
「オラァ!立て!!怪我は治ってるはずだ!あんたこの国で一番強いんだろ!?王国騎士団長サマなんだろォ!かかってこいや!そのひん曲がった根性!バッキバキにへし折って真っ直ぐに矯正してやらぁ!!」
でも……なんか、イイ ーーー !!
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