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王都編

犬に跨って歩くって桃太郎っぽくて良いよな

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かくして、俺とティグレはポチに跨って王都入りを果たした。


「『もーもたろさん、ももたろさん♪おっこしにつっけたーきーびだーんごー♪ひっとつーわったしーに、くーださーいなー♪』」

「オイラならキビで作った団子なんかいらないニャン!一生ご主人についていくニャン」

「ゥオンッ!」

「はっはっはー。かっわいいなあ、タマもポチも」


ヒノモト語で歌った歌も、タマとポチには理解がでくるらしい。異世界素晴らしいな。天は高く、風は涼しく、空は青い。上機嫌にもなろう。先導してくれたのは、事故現場に駆けつけた巡回騎士の多分一番下っ端の兄ちゃん。タマとポチに怯えて馬が使えなかったために自前の足で走った。鉄鎧を着込んだ兄ちゃんは汗みずくで走り、それが楽しいのかポチが小走りで追いかける。軽く地獄。がんばれ下っ端。

関所で検閲待ちの長い長い行列を追い越して、大門の隣にあるやたらと装飾過多な小さな扉に案内される。……うん、ポチが入らない…。


「犬ぅ!小さくなるニャン!」

「オンッ」


ポチは俺たちを下ろしてひと鳴きすると、シュルシュルと小さく縮んだ。ふむ、前世の狼犬アイヌいぬ程度か。これはこれで可愛いな。首に抱きついてモフモフすると、ティグレとタマに引き剥がされた。……チッ、セクハラに厳しい奴らめ。

豪華…というか、成金趣味のギラギラした応接室で待っていたのは王兄殿下だった。


「やあリオ!襲われたって?ああ、酷い臭いと格好だ」


酷い、と言う割には笑っている。想定内、ということか。


「えらいめにあいましたよ。貴方が笑っているということは、あの悪趣味な黒いのは殿下のだったのですね」


王兄はにっこり笑った。


「君はフェンリルとケットシーを所有しているからね。命の危険になれば、魔獣召喚すると思って」

「……王兄殿下、発言してよろしいでしょうか」

「…おや?うん、許そう」


ティグレがキッと王兄を睨む。あー…これは怒ってる。


「あの黒装束の暗殺者たちが、私たちを、リオを襲撃するのはご存知だった…と?」

「ああ、わかっていた」

「なんということを…!一歩間違えれば、リオは死んでいました!貴方の部下たちも!大多数が傷付き、命を落としたものもいました!魔獣召喚?間に合わないことは考えなかったのですかッ」


おっとー。さっきまでべそべそ泣いて、「ばかぁ!」とか言って幼児退行していたとは思えないぞ。


「だが結果。君たちは無傷だ」

「結果論です!……あの暗殺者たちを殺したのは従魔たちではありません。リオです。リオが殺したんですよ!!貴方はリオに!まだ12歳の子供に人を殺させたんだ!!」

「あの…数を……?リオが…?」


ポカン…と王兄殿下は呆けて、嘘がないかティグレを見、俺を見、最後に巡回騎士の兄ちゃんを見た。当然、ティグレはキレてるし、巡回騎士は青くなってこくこく頷いている。俺はちょっと気まずくて目を逸らしたけど。でもさあ、全部俺じゃないかもだぜ?どめさしたのとか護衛騎士のオッサンどもじゃね?俺は気持ちよく暴れ回っただけだし。


「……そう、か…。リオ・プレンダーガスト。君が……」


ククク…と王兄殿下は心底可笑しそうにして、ニィッと口の端を吊り上げた。


「ふっ……クク…ククク……は、ははははは!殺した?あの暗殺者たちを!?『昏暮の影』を!?君が!?リオ・プレンダーガスト!あの暗殺者はね、この王都の都市伝説とも言える、モンサロ王国の暗い暗い影の、1番底の汚泥と言っていい最悪の暗殺組織だ。私はね、最悪、魔獣に守られた君以外は全滅すると思っていた。ははっ!素晴らしい…!良いだよ、リオ・プレンダーガスト!」

「………っ!」

「ティグレ」


拳を握って王兄に詰め寄ろうとしたティグレを制する。ポチはグルルと唸っているし、タマは不機嫌そうに尻尾をしたーん、したーんと打ちつけている。

まあ実際、思うところはある。だけど腹が立つかと言われればそうでもない。謀略姦計はまつりごとの常だ。逆にこれができていないと国は弱体化する。良くて属国、最悪地図からの消滅だ。



だからまあ……上司としては最悪だが、指導者としては最良……いや、普通?まあまあ……うーん、及第点、なのか…。
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