【完結】リオ・プレンダーガストはラスボスである

とうや

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領地編1

母屋の改修と面倒な『親戚』

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本格的にプレンダーガストの屋敷に手を入れることになった。

というか、大工に見せたら「こりゃあ修繕より取り壊して作り直した方が安くつきますぜ」……らしい。まあそうだよな。クソデカ屋敷の7割がたは使っていない空間だ。ガラスが割れた窓は木板を打ちつけ、床は腐って踏み抜いた跡がある。柱という柱に白蟻が巣食い、古い家具にも侵食。何故こんな貧乏領地にこんなにでかい屋敷を建てた、御先祖よ。そして何故ここまで放っておいた、歴代当主。普段使ってる執務室の壁を剥がしたら、ウゾッと赤茶色のアイツが出てきて悲鳴をあげたぞ。


 ーーー ということで。使用人棟にしている離れの別棟に、一時的に住まわせてもらうことになった。宿屋?ないない。だって金と、ここに通う時間がもったいない。あと異世界の宿屋は防犯面と衛生面がちょっとな…。

母屋の工事が始まったら、案の定『親戚』が突撃してくるようになった。娘や息子を連れて…。あー…釣書攻撃が全く効かないから現物で来やがったか。あと、本家が建て直すってことで偵察に来やがったな。「小父さんが子供の頃来た時は、屋敷に何があった~」とか、チラチラしながら言っているが、残念だな。金目の物はないぞ?父親クソが全部売っぱらって失踪しやがったからな。あと娘。甲高い声をずっと至近距離で垂れ流してて、すげえ五月蝿え。こちとら中身は四十路越えのオッサンなんだよ。モテ期が来たって喜ぶガキじゃねえっつーの。怖えよ、欲望まみれじゃねーか。屋敷の使用人たちの冷たい視線に気付け。見ろよ、ティグレなんか汚物を見る目をしてんぞ。無表情だからわかりにくいけど。


「オークウッド卿。申し訳ないが、私はこれから工房に行かねばならん(カエレ)」

「いやいや、気を使わなくて良いんだよリオくん!そうだ!私も工房について行ってあげよう!一度プレンダーガストガラスの工房を見学したかったのだよ!」


馬  鹿  か  こ  い  つ  は


生活圏には立ち入らせたくなかったから仕方なく庭で茶を振舞ったが、こっちは伯爵家でお前は男爵だろう!なんでアポ無しで突撃した挙句に伯爵家うちの使用人にあれこれ命令してんだ!?いつ俺が『リオくん』なんて馴れ馴れしく呼んで良いと言った!?工房に付いていく!?あそこはプレンダーガストのトップシークレットだぞ!?先日の間者騒ぎでキレた職人たちが誓約魔法と魔道具でガッチガチにセキュリティを固めた要塞だぞ!?なんで他人のお前が見学という名のスパイ活動できると思ってるのかなあ!?


「きゃあ!そうですわね!行きましょう!!ねえリオ様!わたくし、プレンダーガストレッドのピアスと指輪が欲しいですわ!」


なんでプレゼントされると思ってるかなぁ、この女も?頭湧いてんの!?『宝石をお強請りしないワタクシ可愛い!』とか思ってるかもだけど、なんで婚約者でも恋人でも、友達ですらないお前にプレゼントしなきゃいけないわけ!?

ちなみにプレンダーガストレッドの宝飾品は希少魔石と同じくらいの値段で取引されている。製造過程でできた欠片が勿体無くて、俺がティグレにピアスを作ってやったのが始まりだ。なんだかめちゃくちゃ気に入ったらしくて、それからずっとそのピアスはティグレの耳を飾っている。

ハアー、と大袈裟に溜息をいてみせる。


「オークウッド卿、プレンダーガストガラス工房はの立ち入りは固く禁じている。先日、間者騒ぎがあったばかりでな。技術を盗もうと目論んでいるわけではない、というのならば見学はご遠慮願おう。あとオークウッド男爵令嬢、私は宝飾品は贈ったりしない。しかも今日会ったばかりの、母の葬儀にも来なかった遠い親戚に?ご冗談を」

「なっ…!?」

「ま…まあ…!?」


心底軽蔑したように鼻で笑った後で、にっこりと。天使のようだと評判の笑顔を向ける。




「憲兵を呼ばれたくなかったら、さっさとお帰り願おうか。セバス!お客様がお帰りだ!」


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