それではみなさま、ごきげんよう〜服飾師ソワヨは逃げ切りたい〜

17.最終話

20日かけて辿り着いたアレスゲーテ公国で、わたくしは無事、アールツナイ様専属の服飾師として就職致しました。この国では人と神様との距離が非常に近く、麗しの花の女神フロウラリア様にわたくしのデザインする服が気に入られたのです。

掃除や洗濯皿洗い。実家にいる時より仕事は格段に増えましたが、わたくしの神、アールツナイ様をいつでも拝めてデザイン帳に想いをぶつけ、自らが布を裁断し、1針1針丁寧に縫う。それを毎日着ていただけるなんて………ここは天国でございましょうか！？

布や素材も、この国に来るときに護衛してくださった冒険者パーティーが持ち込んでくださいます。難しい素材もプレゼントしてくださるのでとても幸せですわ。……でも何故か素材を持ち込む度に冒険者の方数名に求婚プロポーズされてるんですわよねぇ？『せふれ』でも良いと手を握られるのですが、せふれってなに？？？

その冒険者の方々が運んでくださる故郷の『その後』。

度重なる失態をフォローできなくなった王太子殿下は廃嫡。身分を平民とし、クズビッチ嬢の実家の男爵家の婿になったそうです。愛し合う2人ですもの。おめでたいですわね。 

お父様と上のお兄様はキレ散らかし、ヴェルティア公爵家の支持を表明。王家の交代が起こったようです。新しい王となったのはシャーロット様。ああー…お似合いですわあ、女王様…。シャーロット様は戴冠した後、旧王家派閥を一掃。何かに取り憑かれたように苛烈な粛清だったようです。何故か「全て終わったら迎えに行くわ」とお手紙を頂いたのですが……はて？なにかお約束していたでしょうか？

わたくしと元王太子殿下の喜劇 ーーー いえ、悲劇は小説になり、歌劇オペラになって広く周知されました。これにより、わたくしの前に婚約破棄されたリーゼロッテの名誉が回復。『真実の愛』の2人を引き裂いた悪女から一転、小児性愛者ロリコンの被害者として同情されたとか…。ざまぁ。クソ元殿下とクズビッチざまぁ。

1年経った頃に下のお兄様がアレスゲーテに移住してまいりました。『◼️◼️◼️◼️からの転生者』とかなんとかで移住を女神様に許されたようです。ああ、お兄様のあの言葉の数々は、生まれる前の国の言葉だったのですね。『てんせいしゃちーと』？とかで、お兄様はすぐに軍の幹部候補に抜擢されてしまいましたわ。んぐぐ…なんだか悔しいです…！お兄様は実家からのお目付役だと思ったのですが、何故わたくしが冒険者のみなさまに求婚されているのを手を合わせて拝んでいらっしゃいますの？？？『おしのゆりとおとい、もっとやれ』ってなんの呪文？？？



こうして、ラクロット元王家とわたくしの静かな戦争は幕を下ろし、穏やかな毎日がやってまいりました。わたくしは無事に逃げ切ったのです。








それではみなさま、ごきげんよう。