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4.5.【リーゼロッテ視点】
しおりを挟むわたくしとソワヨは幼児の頃からのお付き合いだ。物心つく前からソワヨはわたくしのお友達だったし、特別な人だった。
柔らかな色合いの髪と瞳。ふわふわとした微笑み。婚約者になった王子に虐められた時は颯爽と現れ、王子や取り巻きを言いくるめてわたくしを連れ出してくれた。
わたくしの、わたくしだけの英雄。
頭も良いし、センスもいい。人当たりも良くて、わたくしの両親はソワヨに頼り切っていた。「いっそリーゼロッテのお嫁さんに来ないかしら?」なんてお母様が言った時は「是非に!!」と叫んでしまいましたわ。
そんなことできないのに。
ソワヨには婚約者がいない。実際には釣書は山のように届いているようだが、ソワヨの家族達が許さないようだ。ソワヨは可愛い。本人は『普通』だと言い張っているが、茶会や学園でもとても人気がある。……主に淑女や女生徒に。
そう。ソワヨはなぜか女性に良くモテる。モテモテだ。
男性的でもないし、体つきや顔は女性そのものだ。でもなんだろう。その……仕草、だろうか。時々、わたくしでもドキッとするような色っぽい仕草や目線をする。とある令嬢に聞いたところ、『目と目が合うともうダメ』らしい。うん、わかる。だってわたくしもソワヨが大好きだもの。
そんなソワヨと一緒だったから、わたくしは王太子に婚約を破棄されても悲しくなかった。むしろ清々した。今までの苦労を思い出して泣いてしまったほどだ。
良い機会だわ。わたくし、ソワヨをお嫁にもらいましょう。
そう思ったのに、何故か婚約破棄の次の日には婚約者候補が出来ていた。10歳以上も歳の離れた大国の公爵閣下だった。
絶対嫌だ。
そう思ったのに、公爵閣下はとんでもない優良物件だった。だって彼はソワヨの従兄弟叔父で熱烈な信者だったのだ。
ソワヨの良い所、素敵な所を何時間も語り合い、わたくし達が夫婦になって彼女を支えましょう、と一致団結。公爵閣下はわたくしの婚約者になった。
公爵閣下も一度はソワヨに婚約を打診したらしい。けれど、ソワヨが服飾師として世界に羽ばたいて考えを改めた。ソワヨは結婚などで縛り付けたりしないで、そのまま愛でよう、と。激しく同意。ソワヨはソワヨだから可愛いのである。
わたくしは公爵夫人となり、ソワヨの事を監視……ンンッ、見守りつつも忙しい毎日を送っていた。
ああ、それなのに……。
あのクソ王家、やってくれました。ソワヨを王命で縛ったのです。長男が生まれてわたくしが動けない時に!!
よりにもよって、あの男の婚約者ですって!!??
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