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【千早視点】
しおりを挟む戦闘狂、とはよく言ったものだ。
命の奪い合いのスリルが。血のにおいが。肉を裂き骨を砕き、生き物を屠ることにセックスに似た高揚を覚える。……まあ、戦闘と殺戮がセックスに似てるとか、ユキと初めてヤらないと知らなかった。殺すことに快楽を覚えないと生きていけなかった。楽しいと思い込まないと殺せなかった。脳が誤作動を起こさなければ ーーー 生き延びれなかった。
俺は狂っている。
ユキもそれに気付いた。けれど、俺は狂ってしまってからユキに会った。……だから、いいんだそうだ。ユキは、このままの俺で良いって笑った。俺が命を奪うのは怖いけれど、好きになったのはそんな俺なのだ、と。嫌いになんかならない……と。
ユキを見つけたのはとんでもない幸運だと思う。それこそ、砂漠の中で一粒の金砂を見つけるように。
あのとき ーーー
ユキは、泣いていた。
瀕死の子猫みたいに懸命に。甘く。悲痛に。誰かを呼んで、魂で叫んでいた。気が狂いそうな無音の世界で、確かに泣いていたんだ。
良い嫁を貰ったと思う。
《世界記録》に記された最強種族《七氏族》。兄貴や親父殿たち《創造主》でさえ成し得なかった、魂魄を容易に操る《聖龍》。今はまだ幼くとも、ユキはいずれ恐ろしいバケモノになるだろう。
……でも、俺はユキがただの人間でも、きっと恋をした。
ああ、楽しい。
ただの人間を屠るのとわけが違う。竜王国の『竜人』は《龍人族》の末裔だ。吹き飛ばしたくらいじゃバラバラにならないし、四肢を切り落としたって向かってくる。最高だな!
GYAAAAAAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOUUUUUUU!!!!
竜の咆哮が響く。
さあこいよ、トカゲ野郎。遊ぼうせ?
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