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ぼんやりとお出かけの準備
しおりを挟む「……ス…、……ぅ…国の使者が正式に訪問するとの先触れがありました。また『村』の建設に城下の反応が有り、疑問と困惑、嫉妬と羨望、希望が入り混じっている状態と見ます。反スライグ竜王国組織からのメンバーの離脱は猛反発を受けましたが、こちらは羅刹が武力で制圧。暫くは放置しても問題がないでしょう。それからひと月前に制圧間際で放置したマピシエル聖教区ですが…………ユキ様?」
「……っ!?ふぇっ?」
「……………」
しまった、ぼーっとしてた…。
「ご…ごめん……俺から聞きたいって言ったのに…」
このバベルや俺を取り巻く状況を俺も知っておきたい。そう言って紅葉さんが千早に業務連絡するのを聞かせてもらってたのに…。
「紅葉、イカレ狂信者は泳がセろ。トカゲは放置。使者とかいうのは来たら殺セ」
「御意に」
「あと、……そうだな、ユキをあったかそうな格好にしろ。ああ…うん、紫苑がくレた白いコート。あれとか…」
「は。お出かけになりますか?」
「城下にいク」
えっ…。
「じょうか?」
「ああ、城下ダ。気晴らしになるぞ?」
「えっ…良いの?窓から見える街だよね?いいの?」
「行こウ。城下は通るだけで、買い食いすんのはちょっと移動してアヴァロンだ」
「あばろん?買い食い!」
「そう、買い食イ。クレープとかあるらしいぞ」
「クレープ!!行きたい!」
わあ。わあああ!わあああああい!!
悶々と考えてたのが嘘みたいにテンション上がる。
千早が俺と会った時の黒いコートを着てる間に、俺は紅葉さんにどんどん着せられていく。あれ?コートだけじゃないの?全身真っ白コーデにワンポイントで、コートの襟に青い雪の結晶みたいな……えっと、ブローチ?ラピルペンっていうんだっけ?高そう!でもきれい!千早の目の色みたいに深くて濃い青色だ。
「ふふふ…似合いますね。さすが彼の方の息子ですよ」
いつのまにか見に来てたお母さんがニコニコ笑ってた。なんか胸の奥がチクチクする。なんで?
「……深紅、お前と聖龍の子供だ。可愛いに決まっテんだろ」
「……………!」
あ。千早の言葉でわかった。……そっか。俺、寂しかったのか。お母さんはお母さんなのに、俺のこと聖龍っていうお父さんの子供だって言うだけで、自分の子供だって主張してくれなくて。お母さんなのにお母さんじゃないみたいな態度で。『普通』のお母さんってわかんないけど…。
「……えへ…えへへ!お母さん、俺、可愛い?似合う?お母さんに……似てる?」
「ユキ…」
優しくしてくれるし大事にしてくれる。でも寂しかった。お母さんは『人間』で、お父さんは『聖龍』だったから。だから俺に遠慮してたの?
お母さんはちょっと泣きそうな顔で笑う。
「そう……ですね、ユキは僕にそっくりですよ。遠慮なくガツガツ踏み込んでくる割にはチラチラこっち見てるのはあのひとそっくりですけどね」
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