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おかゆとりんごとデスボイス
しおりを挟む唇に何かが触れた。口の中に入ってきたそれは甘くて、久々の甘味にちゅうちゅう吸い付いた。……あれ?あんまり甘くない。本体はそんなに甘くないのかー…
「……………ん?」
目の前に美人。あー…えーと、なんだっけ。そうそう、千早。あれ?涙目?
「ヨ…メ゛エエェェェえ!」
んっ!?何このデスボイス!?耳痛え!
ぎゅーって千早が抱きついてきた。えっ…どういうこと!?
「目が覚めましたか、伴侶」
あ、肉のニンニクマシマシ持ってた人だ。……そっか。俺、肉の臭いで意識が飛んだのか。ループ監禁生活め…。
今はにおいがしない。それどころか見渡す限りのゴミの山が片付けられて、窓っぽいところから風が入ってくる。
『嫁!もう大丈夫か?さっき俺の指吸ってたけど甘いの好きか?』
なんと。さっきのは千早の指か!
「あ…うん……甘いのおいしかった…」
『近隣国の甘味買い占めてこい』
「ふぇっ?!…ま、待って!!待って!」
何でそういう話!?
「伴侶、先程のものはこちらです」
お椀に入ってるのは何かの煮たやつか。甘い匂いがする。
俺にくれるんだとすげえ嬉しくなって手を伸ばしたのに、なんでかお椀は千早のとこに行った。
「ア゛ー?」
千早にデスボイスであーんされた。えっ…自分で食べれるよ?多分。……あ、そう?うん、はい…拒否権は無いわけね。
スプーンで口に入れられたのは、果物のシロップ漬けだった。あま~い!おいし~い!
『よく噛めって言ってた。これくれたちっこいのが』
ちっこいの?
トロットロに煮た果物のシロップ漬けは、千早がお椀の中で小さくして口に運んでくれる。よく噛まなくても蕩けるみたいに溶けていく。この美味しさのためなら食べさせてもらう恥ずかしさとかミジンコ以下だよね!
その後に出された熱々のお粥はほんのり甘くて塩味で、美味しくて何度も口を開けてたら鍋が空になったらしい。うう…恥ずかしいくらいお腹ぽっこりだよ……。
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