66 / 70
嫌がらせらしい
しおりを挟む……えっ、なにそれ。
女神な微笑みでイチが掲げたのは安っぽい黄ばんだ布袋に入れられたそれ。正直嫌な予感しかしない。大きさは前世のバスケットボールくらい。血とかはついてないけど……
「御方々からの贈り物です。『聖女』とかいう女がいたら目の前で壊せ、と仰せつかっております」
ズルリと袋から出したのは、やはりというかなんというか。しょぼくれた長髪の爺さんの首だった。まだ生きているが声帯を潰されているのか酷い声で呻いている。
「………ヒッ…!!??」
女が息を飲む。あー…流石に気狂いでも怖いか、生きた生首は。
「あ、あ、あ……ああああああ!!!か…か、み…さ……ま…!!」
まさかの『神』だった…。
「あ、安心しなさい、ユス。コレは結婚祝いではないと御方々が仰っておりましたから、壊しても暁様がしょんぼりすることはありません。御方々が仰るには『嫌がらせ♡』だそうです」
性格最悪だな古きものども!?
「あっ!はーい!おれやる!壊す!パーンッて割っちゃう!」
アキさんや…クス玉とか風船割るノリなのかい?それともストレス解消のオモチャなのかな?
「……ユスのこと、『あたしのユスティア様』とか言った女の泣きっ面が拝みたいんだよねぇ?」
まさかの理由。……ああー…うん。やっぱアキはアイツらの息子だよ……。そしてイチ!ニコニコしながらアキにそんなもの渡さないで!!お前の顔、まんま孫に小遣い渡す爺ちゃんの笑顔だぞ!?
「や…やだ……やだ!!やめてっ!!ヤダヤダヤダヤダ!!やめてよお!!なんなの!?なんなのよこれ!?違う…!全然違う!なんで!?どうして!?なんでシナリオ通りに進まないの!?好感度が足りないの!?隠しイベント飛ばしちゃった!?なんで?どうして?どうしてこんなことになっちゃったの?なんでこんなバグが出てるの!?リセット…リセットはどこ?ホームに戻って……タスキルして……」
……なんだ?まさかこの子…。
「もうやだあ!!帰る!!地球に帰る!ユスティア様じゃなくていい!冴えない彼氏でもいい!!あたし、帰る!!!こんなのやだ!夢なら覚めてよ!!家に帰る!地球に!日本に帰る!!やだ…、やだ、や…やだあああああああああ!!!!」
「馬鹿だね?これが『現実』だよ?ゲーム気分で他人の男を攫って引っ掛けて。引っ掻き回して何人もの人生をぶち壊してきたんだろ?自殺しちゃった子もいたよねぇ?処刑された男もいたよねぇ?一途ならまだ良かったんだけど…おれさぁ、……あんたみたいな奴、大っ嫌い」
にこりとアキが天使の笑顔で笑って ーーー
手の中の『首』を、両手で握りつぶした。
111
お気に入りに追加
1,694
あなたにおすすめの小説
異世界は醤油とともに
深山恐竜
BL
俺が異世界に転移したときに女神から与えられたのは「醤油精製」――左手の中指から醤油を自在に出せるようになるスキルだった!? 役立たずの外れスキルにより、俺は生活に困っていた。
そんなある日、このスキルに興味があるという料理人シッティに頼まれ、彼に「和食」を教えることに。
俺は知識を振り絞ってちゃんとした料理、ときには簡単ずぼら一人男飯をシッティに教え、彼と食卓を囲む日々を送る。
優秀なシッティは次々と和食を完成させていくが、実は彼は王宮料理長で、和食が王宮を巻き込んでの騒動のきっかけに……?
几帳面な年下料理人×異世界転移したずぼらおっさん
ブラッドフォード卿のお気に召すままに~~腹黒宰相は異世界転移のモブを溺愛する~~
ゆうきぼし/優輝星
BL
異世界転移BL。浄化のため召喚された異世界人は二人だった。腹黒宰相と呼ばれるブラッドフォード卿は、モブ扱いのイブキを手元に置く。それは自分の手駒の一つとして利用するためだった。だが、イブキの可愛さと優しさに触れ溺愛していく。しかもイブキには何やら不思議なチカラがあるようで……。
*マークはR回。(後半になります)
・ご都合主義のなーろっぱです。
・攻めは頭の回転が速い魔力強の超人ですがちょっぴりダメンズなところあり。そんな彼の癒しとなるのが受けです。癖のありそうな脇役あり。どうぞよろしくお願いします。
腹黒宰相×獣医の卵(モフモフ癒やし手)
・イラストは青城硝子先生です。
運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…
こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』
ある日、教室中に響いた声だ。
……この言い方には語弊があった。
正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。
テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。
問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。
*当作品はカクヨム様でも掲載しております。
異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話
深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?
異世界転移して出会っためちゃくちゃ好きな男が全く手を出してこない
春野ひより
BL
前触れもなく異世界転移したトップアイドル、アオイ。
路頭に迷いかけたアオイを拾ったのは娼館のガメツイ女主人で、アオイは半ば強制的に男娼としてデビューすることに。しかし、絶対に抱かれたくないアオイは初めての客である美しい男に交渉する。
「――僕を見てほしいんです」
奇跡的に男に気に入られたアオイ。足繁く通う男。男はアオイに惜しみなく金を注ぎ、アオイは美しい男に恋をするが、男は「私は貴方のファンです」と言うばかりで頑としてアオイを抱かなくて――。
愛されるには理由が必要だと思っているし、理由が無くなれば捨てられて当然だと思っている受けが「それでも愛して欲しい」と手を伸ばせるようになるまでの話です。
金を使うことでしか愛を伝えられない不器用な人外×自分に付けられた値段でしか愛を実感できない不器用な青年
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
コンビニごと異世界転生したフリーター、魔法学園で今日もみんなに溺愛されます
はるはう
BL
コンビニで働く渚は、ある日バイト中に奇妙なめまいに襲われる。
睡眠不足か?そう思い仕事を続けていると、さらに奇妙なことに、品出しを終えたはずの唐揚げ弁当が増えているのである。
驚いた渚は慌ててコンビニの外へ駆け出すと、そこはなんと異世界の魔法学園だった!
そしてコンビニごと異世界へ転生してしまった渚は、知らぬ間に魔法学園のコンビニ店員として働くことになってしまい・・・
フリーター男子は今日もイケメンたちに甘やかされ、異世界でもバイト三昧の日々です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる