【7人の魔王1】転生したら悪役令嬢の父だったらしい

恋人にランクアップらしい

お付き合いすることになりました。

え？誰とって？アキだよ。俺の方が恋愛初心者だから、とりあえず『手を繋ぐ』からだ。


「え…で、でも……ユス？いいの？え…？えっ……？？？」


俺からの告白に目を白黒させたアキだったけど。「まどろこしいブスッとやっておしまいなさい」とか言いながらイチが身悶えてたけど。

食料から始まった俺、魔王の恋人にランクアップ。

えーと、なんかアレだ。

俺を生贄にしてくれた兄上ありがとう。俺は幸せです。


そうなんだよな。『生贄』だったんだ。

ヴェルミアは干魃に備えて農業用水路もばっちりだし、ダムも溜め池も地下水の汲み出しだって準備万端だったけど、エネシア全体では大干魃だったんだよなあ。雨は降ったんだろうか。まあ最悪、お隣のエイリヒサに天候魔法が使える魔術師を派遣して貰えばいいんだけど……あー、どうなんだ？エイリヒサの王は俺の学園時代の友人だったし、王太子は娘にベタ惚れだったしなあ…。ま、考えても仕方がないか。


だってユスティア・ヴァル・エネシア・ヴェルミアは死んだのだから。


馬車ごとクレバスに落とされて。「お前はもう要らない」と殺されたんだ。

だから今の俺は、ユスティアとしての記憶はあるが、『ユス』という新しい人生を生きている。ユスティア自身が自分を『もう必要のないもの』として切り捨てた。前世を思い出した時から混ざりがちな人格は、もうすっかり『ゆうくん』に引き摺られておかしな具合にまとまった。ユスティアとしての『感情』はもう殆ど無い。

こんな歪な俺でも好きだって言ってくれるアキはものすごく物好き……げふん。特殊な嗜好の持ち主じゃないだろうか。







……大事にしよう、うん。