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あーん…らしい

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暁様はほんとに3日ほどハンストした。もうね、ほんとまじ勘弁してよ。イチやその他多勢は何も言わなかったが圧がすごい。でもさあ、ねえ?俺、奴隷でしょ?一応眷属化したって言っても、そういうケジメは必要だと思うんだよね。

3日目に、暁様が目に涙をためて「おなかすいた…」と縋ってきた時に折れた。俺が。心も折れた。もういい、常識捨てよう。何でこの人俺に怒ってハンストしたのに俺に泣きついてくるんだ…。

一件落着した直後に、俺の肩書きが奴隷から従者になった。なにこのスピード出世。

名前は『暁様』から『アキ』になった。敬語も不要。まあ何と言うか、要は息子に接しているようなくだけ具合でいいらしい。えーと、息子に接する……って、あー……ユスティアわたしはすっげえ家族を蔑ろにしてた記憶があるんだが…。まずい。家族の誕生日さえ覚えてねえ。公爵としての仕事が忙しすぎて……っていうのは言い訳だろうなあ。…そう言えば、息子は…イヴァンは無事にヴェルミア領を治めているだろうか。冒険者ギルド支部長も商人ギルド長もかなり癖のある人物だったから、まとめて金で抱き込んで領地運営していたんだが…。まあ、息子がをしたら執事あたりが物申してくれるだろう。……解雇してなきゃ、だが。


つらつら考えながら、今日のおやつを揚げていく。

本日のおやつはドーナツ。パン生地みたいに酵母で発酵させて作るドーナツだ。これはこれでもっちりして美味いんだが、お手軽に作るためにベーキングパウダーが欲しい今日この頃。

ドーナツの真ん中に穴を開ける作業をアキにお願いしたらめっちゃ喜んでた。機嫌が良くなったようでなによりだ。


「ユス、あーん」


そしてあの一件以来、距離が近い。今も揚げたてドーナツを食べさせてくれとせがんでくる。……寂しかったんだな、うん。


「はい、あーん」


たっぷりと粉砂糖を振り掛けたドーナツを千切ってアキの口に入れる。ふにゃっと笑うアキは今日も天使だ。もっと食べさせよう、大きくなあれ。

アキも俺に食べさせてくれるんだが……えーと、あのな?2人っきりじゃないんだよ。あ、別の意味で2人っきりも困るんだけどさあ。

俺が作る料理はともかく、おやつが今モールドレのゴブリナ(女ゴブリン)の間で大人気らしいんだ。だからおやつ作るときには厨房の奴らが見学に来る。ナナジなんか奥さんと娘が楽しみにしてるらしく、せっせとメモとって帰る。イチやニィヤも来てつまんでいく。「砂糖が足りませんね」とか言いながら食べる。やめろ糖尿病予備軍め。






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