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視察 4
しおりを挟む栢木のギルドでの用事というのは資金や装備品の引き上げだった。あとは冒険者登録の抹消。本気でアヴァロンに移住してくれるようで嬉しい。
だが ーーー 。
「口座の抹消!?装備品の処分!?どういうことだ!?死亡したとしても遺族が引き取りに来た時のために1年の猶予はあるはずだろ!?」
「あ…あの……すみません…端末にそう出ているのでわたしにはちょっと………少しお待ちいただけますか?本部に確認を…」
慌てて水晶玉のようなものを取り出す職員。ああ~、詐欺とかじゃなくてこの職員はホント知らないんだろうなあ。
「生きていたか『ファントム』」
デカいおっさんが奥から現れた。
「ハーヴェイ、今ここのギルマスはあんたか?どうなってんだ俺の金と装備」
「どうしたもこうしたも…お前が依頼失敗して、依頼元のゼノドアが国ごとなくなって本部は『なかったこと』にしたようだ」
「はあ!?」
「『ファントムのアレ』は存在しない。冒険者が魔王の領地に潜入した事実もない。冒険者ギルドは全くの無関係だとな」
「……は…」
ショタおっさんの目から光が消えた。あー、キッツイだろうなあ。5ヶ月前までは仲間だと思ってたとこからの手のひら返し。
「……俺の、集めた…菌、は………」
「金になる装備品はすでに競りにかけられ、口座の金は全額本部の懐だ。それ以外のガラクタは……まあ多分、処分された」
「………っ…」
あっ、栢木が闇落ちした。ホンット菌が好きなんだなぁアイツ…。
「………わかった、邪魔したな。登録の抹消……も必要ねえか…ハハッ…」
ふらりと危なかしい足取りで踵を返す。
「なあハーヴェイ?お前は関わってない…な…?」
「あ…ああ、神に誓って」
「そっか…うん、そっか……じゃあ本部だけでいいか…」
「……っ…ファントム!お前さえ良ければエーベルシュタイン支部で再登録できるようにする!偽名は名乗らないといけないだろうが、……そのっ…!」
「……いや、いい。もう冒険者はやらないんだ。仕えるべき主人に出会ったし、今の拠点には愛する菌が居るんだ…」
「あ…あいする……!?」
「前世で生き別れになって……ようやくまた会えた…」
「ファントム…」
うん、麹菌の話だな。あのギルドマスター、すっげえ悲壮な顔してるけど、もしかしてもしかしなくても栢木に惚れてたんじゃね?菌に負けたけど。
栢木が視察を続行できるような状態じゃなく一旦帰った後、栢木は10日ほどの休暇を取った。
ボロボロの血塗れで帰ってきた栢木は欠けた小さな容器を抱えて「オリゼー…!!」と泣き崩れていた。……うん、オリゼーって麹菌の名前だよな?紛らわしいことはやめろ。レイブンとドワーフたちが同情してるだろ!?
その後レイブンの諜報より、ヴァージュニーア聖王国にある冒険者ギルド総本部が謎の壊滅をしたと報告があった。わー、物騒だな異世界(遠い目)
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