上 下
44 / 174

【凛視点】

しおりを挟む


クロがお出かけしていったと思ったら30分もしないうちに帰ってきた。まあ僕の体感的にはすっごくすっごく時間が経ってるんだけどね!だってクロと離れるなんてヤダ。だってこの世界に来てからずっとずっと、24時間クロのそばにいるんだもん。


「凛様、魔王討伐軍を椿様が見事撃破されました」

「えっ、なにそれ聞いてない」


魔王討伐軍とかいうの、結構近くまで来てたんだって。んで、クロはそれを見に行ってついでに全滅させちゃったらしい。えっ、僕の奥さん強すぎない!?


「さすがは凛様の伴侶!御子息様の中でも群を抜いて決断力がおありなのではないでしょうか?ああ、素晴らしい!一瞬にして光の刃が降り注ぎあの汚らしい人間ゴミどもを肉塊に変え、勇者とかいう女神クソムシの情人の首を撥ね飛ばし、迷いなく私に片付けを命じられました。ああでも私、フュールは凛様から今一度ご命令をいただきたく……」

「えっ…見たの……?クロの?かっこいいとこ見ちゃったの?」

「え……あ、はい…」

「一緒にお出かけしてたの?クロと?二人っきりで?」

「え……い、いえ、周りにはすぐに出動できるよう眷属がおりましたが…」

「僕に言わずに?勝手に?ついていったの?」

「あ……え、ええと…その………」


なんてことだ!!こんなところにもライバルが!!!


「…………」

「も…申し訳、ございません……!」

「………もういいよ。だって案内役は必要だもんね?でもねえ…次はないよフュール?」

「肝に銘じます!!!」

「よろしい、じゃあお片付けいってらっしゃい」

「は!」


慌ただしくフュールが部屋から出て行く。

ちょっとして、クロが


……うん、そう。実は僕、もうほとんど見えてる。そりゃそうだよね。だってクロが僕の伴侶なんだもん。っていうのはそういうことでしょ?

クロは弱っていた。多分精神的に?声は平気そうなのに、明らかに弱っていた。クロが僕の太腿に頭を乗せる。膝枕だ。子供の頃以来だ。可愛い。可愛い。僕のクロ。弱ってて可哀想なのにすごく可愛い。僕はクロの綺麗な黒髪を撫でる。僕みたいに長くなくて、真っ直ぐでサラサラしてて気持ちいい。僕の髪は真っ直ぐだけど猫っ毛で、指で梳いてもすぐに絡まる。

クロがポツポツ話してくれるのは、討伐軍とかいうのを殺したのはどうでもよくて、それを僕がどう思うか…って事だった。

馬鹿だなあ。僕はこんなにクロが好きなのに。もうとっくに人間じゃないし、自分を人間だって信じて疑わなかった時からクロが人殺しでも人類の敵でも、クロが大好きなのに。


「……なあ、シロ」

「んー?」


クロがギューッて僕の腰に抱きついてきた。んんー、ダメだってば。僕だって一応性欲くらいあるんだよ?っていうかクロ相手だったらめちゃくちゃたい。えー、いいのかな?ここベッドだし、僕たち夫婦だし、いいよね?まあ今日最後までしなくても、触りっこくらいなら……


「俺と……結婚してください…」

「…………………」


んっ???結婚???今更?えっ……







僕たち夫婦だよね!?






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

将軍の宝玉

なか
BL
国内外に怖れられる将軍が、いよいよ結婚するらしい。 強面の不器用将軍と箱入り息子の結婚生活のはじまり。 一部修正再アップになります

公爵家の五男坊はあきらめない

三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。 生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。 冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。 負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。 「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」 都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。 知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。 生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。 あきらめたら待つのは死のみ。

出戻り聖女はもう泣かない

たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。 男だけど元聖女。 一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。 「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」 出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。 ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。 表紙絵:CK2さま

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?

ゆい
BL
涙が落ちる。 涙は彼に届くことはない。 彼を想うことは、これでやめよう。 何をどうしても、彼の気持ちは僕に向くことはない。 僕は、その場から音を立てずに立ち去った。 僕はアシェル=オルスト。 侯爵家の嫡男として生まれ、10歳の時にエドガー=ハルミトンと婚約した。 彼には、他に愛する人がいた。 世界観は、【夜空と暁と】と同じです。 アルサス達がでます。 【夜空と暁と】を知らなくても、これだけで読めます。 随時更新です。

姫を拐ったはずが勇者を拐ってしまった魔王

ミクリ21
BL
姫が拐われた! ……と思って慌てた皆は、姫が無事なのをみて安心する。 しかし、魔王は確かに誰かを拐っていった。 誰が拐われたのかを調べる皆。 一方魔王は? 「姫じゃなくて勇者なんだが」 「え?」 姫を拐ったはずが、勇者を拐ったのだった!?

白い部屋で愛を囁いて

氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。 シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。 ※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

処理中です...