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【凛視点】
しおりを挟むクロがお出かけしていったと思ったら30分もしないうちに帰ってきた。まあ僕の体感的にはすっごくすっごく時間が経ってるんだけどね!だってクロと離れるなんてヤダ。だってこの世界に来てからずっとずっと、24時間クロのそばにいるんだもん。
「凛様、魔王討伐軍を椿様が見事撃破されました」
「えっ、なにそれ聞いてない」
魔王討伐軍とかいうの、結構近くまで来てたんだって。んで、クロはそれを見に行ってついでに全滅させちゃったらしい。えっ、僕の奥さん強すぎない!?
「さすがは凛様の伴侶!御子息様の中でも群を抜いて決断力がおありなのではないでしょうか?ああ、素晴らしい!一瞬にして光の刃が降り注ぎあの汚らしい人間を肉塊に変え、勇者とかいう女神の情人の首を撥ね飛ばし、迷いなく私に片付けを命じられました。ああでも私、フュールは凛様から今一度ご命令をいただきたく……」
「えっ…見たの……?クロの?かっこいいとこ見ちゃったの?」
「え……あ、はい…」
「一緒にお出かけしてたの?クロと?二人っきりで?」
「え……い、いえ、周りにはすぐに出動できるよう眷属がおりましたが…」
「僕に言わずに?勝手に?ついていったの?」
「あ……え、ええと…その………」
なんてことだ!!こんなところにもライバルが!!!
「…………」
「も…申し訳、ございません……!」
「………もういいよ。だって案内役は必要だもんね?でもねえ…次はないよフュール?」
「肝に銘じます!!!」
「よろしい、じゃあお片付けいってらっしゃい」
「は!」
慌ただしくフュールが部屋から出て行く。
ちょっとして、クロがひどい顔色で帰ってきた。
……うん、そう。実は僕、もうほとんど見えてる。そりゃそうだよね。だってクロが僕の伴侶なんだもん。クロの記憶が戻って、僕の目が見えるようになったっていうのはそういうことでしょ?
クロは弱っていた。多分精神的に?声は平気そうなのに、明らかに弱っていた。クロが僕の太腿に頭を乗せる。膝枕だ。子供の頃以来だ。可愛い。可愛い。僕のクロ。弱ってて可哀想なのにすごく可愛い。僕はクロの綺麗な黒髪を撫でる。僕みたいに長くなくて、真っ直ぐでサラサラしてて気持ちいい。僕の髪は真っ直ぐだけど猫っ毛で、指で梳いてもすぐに絡まる。
クロがポツポツ話してくれるのは、討伐軍とかいうのを殺したのはどうでもよくて、それを僕がどう思うか…って事だった。
馬鹿だなあ。僕はこんなにクロが好きなのに。もうとっくに人間じゃないし、自分を人間だって信じて疑わなかった時からクロが人殺しでも人類の敵でも、クロが大好きなのに。
「……なあ、シロ」
「んー?」
クロがギューッて僕の腰に抱きついてきた。んんー、ダメだってば。僕だって一応性欲くらいあるんだよ?っていうかクロ相手だったらめちゃくちゃしたい。えー、いいのかな?ここベッドだし、僕たち夫婦だし、いいよね?まあ今日最後までしなくても、触りっこくらいなら……
「俺と……結婚してください…」
「…………………」
んっ???結婚???今更?えっ……
僕たち夫婦だよね!?
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