【7人の魔王シリーズ 番外】ルーカス・フェリエーラは妹を愛でるのに忙しい。

【記憶の断片 6】

「君を見ていると孫たちを思い出すよ」


マグカップに並々と注がれた珈琲の湯気の向こう。『教授プロフェッサー』と呼ばれたお爺ちゃんは笑った。にこにこと。俺がアレクシス様の命令でここを訪れる度にお茶に誘われる。お菓子美味しい。


「元気で物怖じせず、食いしん坊で兄弟仲が良かった。末の妹をとても大事にしていてね？ああ、よく似ている」


食いしん坊っていうのはアレだ。俺が戦場で人の肉だろうが腐りかけの物だろうがパクパク食べてた時の印象だろう。あれもお食べ、これもお食べとお爺ちゃんは俺に配給のパンや肉をくれた。断るとすごく悲しそうにするから半分だけ貰ったけど。

お爺ちゃんは俺の頭を撫でたがる。俺が前世の記憶があるから中身はもうオッサンだって言っても笑っている。だから好きにさせてる。だってもう ーーー このお爺ちゃんは、教授は狂ってる。何を言っても、もうわかってないんだ。それでいて研究成果は素晴らしいものばかりだから、陛下が教授を手放さない。

だから俺は、この可哀想な教授の孫になると決めた。まあ気恥ずかしくて「おじいちゃん」なんて呼べないけれど。


「さあ僕の可愛い孫。異世界の話を聞かせておくれ。じぃじは君の話はとても面白くて仕方がないんだ」


にこにこと。好好爺然と教授が笑う。家族を酷い方法で奪われて、狂ってしまった可哀想なお爺ちゃん。