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ルーカス・フェリエーラの狐狩りの準備
しおりを挟む『んもうっ、無粋なニンゲン!神界に帰ってテウメッサに文句言ってやるわ!!』
プリプリと怒ってザリエルは消えた。テウメッサは隣国の主神だ。狐のような姿で降臨るというが、決して顕現しないザリエルが格下という訳ではない。雌獅子の神であるザリエルが怒鳴り込めば大抵の神は震え上がるだろう。
「……なにか御用ですか?」
「いえいえ、貴方こそ。なぜこのような廃墟に?」
ドミニク・ファーバー校医。いや、ドミニクス・ファーゲルリーン。隣国ファーゲルリーンの第四王子。ロゼマリアの言う『おとめゲーム』では『獅子の瞳』を持つ悪役令嬢ロゼマリアを誘拐しようと学園に潜入。ヒロインと惹かれ合い、祖国を裏切るらしいが…。うーん、糞売女、ちゃんと繋いどけ。この阿保校医のターゲットが俺になってるじゃないか。
「お祈りを。今この情勢では神殿にはちょっと…でしょう?」
少し困ったように笑って見せる。外にいるのは1、2、3……15…程度?うーん、報告にあった溝鼠の数の3割程度か。ここで掃除するのは簡単だけど、残りの鼠が逃げてしまうなあ。
「フェリエーラ子爵、ウルリカ嬢が聖女になってはこの国は生きにくいでしょう?」
「……そう、ですね…」
うん、結構直接的に揺さぶりをかけてきたな。
「ウルリカ嬢は妹さんを目の敵にしている。神殿も、聖女になることを拒んだ妹さんを始末しようとしていますよ?」
「………へえ…」
それはそれは。この情報が本当なら、俺には意図的に知らされなかったということだ。クッソ、誰だ。陛下か?それともアレクシス様?盗賊ギルドもグルか。俺がロゼマリア関係だと暴走するとでも?……するけど。普通に。
「フェリエーラ子爵……いいえ、ルーカス。私と共に隣国へ行きませんか?」
「えっ…」
「もちろん、妹さんも一緒に、です。私は多少なら隣国に伝手があるんですよ。仕事も、住む場所も、当座の生活資金もお貸ししましょう。……どうです…?」
「そんな…いや、どうして……」
「心配なんですよ、妹さんが」
「………」
「短い間でしたが、妹さんも私の生徒でした。いつも顔色が悪くて心配で…それが……ええ、このようなことになって残念で…」
ふーん。へー。ほー。
ロゼマリアをあの糞どもと一緒になって甚振ってたって事実を知らなきゃ、うっかり絆されそうな演技だな、これ。
「…先生……!」
「ああ、でも君には監視が付いていますね?この廃屋の外にも…」
「え…そ、そんな……」
うん、それアレクシス様がこっそり付けた護衛。ちなみにヴィルヘルムートだと思う。
「ああ、大丈夫です。声までは聞こえないでしょう。ですが…ええ、そうですね。詳しい話を後でしましょう」
「……あ…そ、それなら…新年の祝いの日…先程の女神様はお忙しく、国中お祭りです。多分、陛下の見張りも少なくなるので…」
「なるほど!ではその時にお会いしましょう。場所は ーーー 」
さて、狐狩りの始まりだ。
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