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ルーカス・フェリエーラとお迎え
しおりを挟むロゼマリアの午後の授業も無事終わり、さあ帰るか!と馬車止に行くと大公家家紋の馬車が停まっていた。馬車から出てきたのはやっぱりアレクシス様だった。
「ルーカス、ロゼマリア、仕事が早く終わってな。待ちきれなくて迎えにきた」
おおう、そういえば今日は金曜日か。ハイハイ、サービスデーチートデーご奉仕いたしますよ。
「甥が泥だらけで陛下に突撃していたから何かあったと思ってな?」
「あ、はい。でもとりあえず泣かしといたんで」
「ククッ…まるで子供の喧嘩だな?」
「子供ですよ?だから躾けておかないと」
「怖いな」
クックック…って何か企んでるように笑うあなたに言われたくないです。
アレクシス様は流れるようにロゼマリアをエスコートして馬車に乗せる。その勢いで俺をエスコートしようとしたから手のひらを指で軽く叩いておいた。
「お戯れを」
「ふふ…では仕方ない。屋敷に帰ってからだな」
外では駄目だって。まあロゼマリアが卒業したら俺たちの結婚も公表するつもりだからいいけど。
馬車の中は快適。俺が教授にスプリングのバネを教えたらすぐに作ってくれた。異世界の便利グッズを囁く俺を教授は孫みたいに可愛がってくれる。普段は二八部隊の奥にある研究施設に引きこもってるから中々会えないんだけど。
「今日はごめんねロゼ…」
「えっ…?」
「ほら…殿下の腕を捻って拘束しただろう?怖かったよね?」
「あ…ああ、あれは……ううん、違うの。怖かったっていうより、その……嬉しかった…。嬉しくて、でも誰かが酷いことされてるのに嬉しくて泣きそうになる自分が怖くて……私、やっぱり悪役令嬢なのかなあ…って……」
「嬉しかったの?」
「うん……ルーカスが私を守ってくれたのが、すごくすごく嬉しかったの…」
「ロゼ…!」
良かった!怖がられてない!!
「嬉しかった…!」
ぽろぽろ涙をこぼすロゼの隣に座って抱きしめる。家にも学園にも居場所がなかったロゼマリア。気を許せる頼もしい存在にならなければならない侍女は悪意でロゼを醜くして、それに気付いて当主に報告せねばならない母親や執事、使用人たちは全員共犯。婚約者やその取り巻きたちは笑いものにして、都合のいい時だけ「婚約者だろう」と何かを命じた。
あー、むかつく。だが今日の呆気に取られた顔は面白かった。二度と近付かせないが。
多分、王太子は慌ててロゼマリアに接触を図ろうとするだろう。「婚約者なんだから」とね。側近候補たちはどうするだろう。あのクソビッチに夢中で婚約破棄秒読みらしいが、ロゼマリアを王太子に貸してもらおうとか考えるんだろうなあ。あ~、ヤダヤダ、最近の若い子って性的モラルどうなってんの?同じ歳だろうけど。
まああの糞どもがロゼマリアを手に入れようと躍起になれば、当然面白く無いのはクソビッチだ。揉める。絶対揉める。ああ楽しみだ。
道化は道化らしく、勝手に踊って勝手に転げて堕ちていくと良い。
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