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ルーカス・フェリエーラの溜息
しおりを挟むドレスとコルセットを脱がせ、俺のシャツを着せて寝かせたロゼマリアの呼吸が穏やかになった。クリセルダが夜着を貸してくれようとしたのだが、何というかその……透けていて布部分が非常に少なかったのだ。他のメイドたちが家から取って来てくれるとは言ったが断った。
場合によると、俺はすぐにこの大公邸を出ていくことになる。
11年ぶりに握ったロゼマリアの手は、ほっそりとした大人の手になっていた。
どうしてこんなことに……。ロゼは、ロゼマリアは、筆頭公爵家の長女で、紫の目を持った大切な娘で、王太子の婚約者で……。
ぐるぐると情報が俺の頭を浮かんでは沈む。
幸せなはずだった。いずれは国母になり、このレーヴァンシュタインで一番幸福な女になるはずだった。俺はそれをそっと見守るだけで良かった。なのに…。
「ルーカス」
ノックと共に客間に入って来たのはアレクシス様だった。
「……ルーカス、今日は、その………悪かった…」
「………何故?どうして貴方が謝るんです?」
「王族の誰もが謝らないからだ。陛下も…兄上でさえカーディナル嬢に謝罪しない。然るべき沙汰は下すと言っているが、その具体策は示されていない」
「…そう、ですね……」
「王太子と側近たちはまた今日から10日ほど謹慎だ。王妃は卒倒して寝込んでる。全く…謹慎が解けた直後に暴行事件だと?今度は監視が付くらしいが……」
「……カーディナル家は…?」
「あー……うん、その…」
「……もう要らないから好きに処分しろとでも言われました?」
「……っ…いや、そこまでは…」
「ああ、似たようなことを言われましたね?」
カーディナル公爵にとって、長女だろうと正妻の子だろうと、王子の心一つ繋ぎ止めきれない道具は必要ないのだろう。それが例え紫色の瞳でも、女性が王位に就けない今、何の価値もない。
はあ、と。今日何度目かわからない溜息を吐いた。
「……ルーカス結婚しよう?」
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