【7人の魔王シリーズ 番外】ルーカス・フェリエーラは妹を愛でるのに忙しい。

ルーカス・フェリエーラの動揺

大公邸に着くと、すぐに執事頭のギルベアトが出てきた。


「ルーカス？アレクシス様はどうした？それにその令嬢は…」

「……妹だ。熱があるんだ。少し休ませて……すまない、ここを、国を出る」

「は？何を言っているルーカス！？アレクシス様はなんと言っているんだ！？」

「アレクシス様は関係ない！もう王族も貴族も信用ならない…！俺は妹を連れて国を出る。それしか…」


「ねえルーカスちゃん？それよりそのお嬢さん苦しそうだわ？ドレスを脱がせてコルセットを取ってあげなきゃ」


いつのまにかギルベアトの横に立っていたのは侍女頭のクリセルダだ。「ね？」を笑って手を差し出す。

ドレス…コルセット……そうか。この重たい服を脱がして、それから……それから…？


「落ち着くんだルーカス。アレクシス様がお前に…俺たちに非道な振る舞いをされるはずがない。落ち着くんだ。もしアレクシス様が本当にそうだとしたら、俺がぶん殴ってでも反省させるから…」

「そうよ？アレクシス様に相談して、それでも国を出るというなら、アレクシス様がたとえ反対したって私たちが協力してあげる。だってルーカスちゃんは私の息子みたいなものだもの。ね？ルーカスちゃん？」


落ち着く……。


すとん、とその言葉が落ちてきた。

そうか……俺は、俺は………ロゼマリアが虐げられているのを目の当たりにして……冷静じゃなかったのか…。


「………妹を…ロゼマリアを…お願いします……」

「ええ、任せて頂戴」


クリセルダにロゼマリアを預け、息を深く吐く。心を落ち着けて周りを見ると、屋敷から出てきた使用人やここに送ってくれた御者までが、気遣わしげに俺とロゼマリアを見ていた。