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閑話:魔女01
しおりを挟む無垢なる魔女。それがわたくしの役割らしい。
役割に気付いたのは断頭台の上。
ああ、この血のように赤い夕陽。シミの落とし切れない、刃の錆び付いた断頭台。粗末な服を着た見物人たちの、狂ったような歓声。
ここはゲームの世界だ。
前世でたくさんプレイした乙女ゲーム。もう……タイトルさえも覚えていない。だけど、この夕陽と断頭台のスチルだけは覚えていた。
わたくしは教会で飼われていた魔女。蝶よ花よと教会で育てられ、王太子の婚約者になって ーーー そして、ヒロインに全てを奪われる役割。
そう、この国は『無垢なる魔女』を神に捧げる事により保っている。10年に一度、生贄は捧げられる。
ああ……ああ、ああ、ああああああああ………。
笑っている。みんな笑っている。
わたくしの自慢の髪は切られ、なんとも言えない臭いのする断頭台に押さえつけられる。
笑っている。愛する元婚約者が。憎っくき恋敵が。神父様が。陛下が。王妃が。友人が。民衆が。
この国を守護する神様が、笑っている。
ーーー 一度では首は落ちなかった。
何度も何度も失敗して、苦しんで苦しんで苦しんで……ようやくわたくしは終わる。
そして朝が来た。
そう、わたくしは時戻りをしていたのだ。10年前の、あの先代の魔女の死んだあの日に。
今度はわがままなんか言わない。ヒロインも……いいえ、誰も虐めない。王太子に愛を押し付けるだけではなく、愛される努力もしよう。
それでもダメだった。
わたくしはまた首を撥ねられる。
次は王太子との婚約を拒否した。
わたくしは王太子に大勢の前で犯された。
傷物になったわたくしは王太子の婚約者として生きていく他はなかった。
次は逃げ出した。
わたくしは捕まって幽閉され、そのまま18歳の誕生日に死んだ。
その次は死のうとした。
わたくしは手足を外科手術で切り取られて生かされ、18歳の時に断頭台の前に引き出された。
この国を呪う本物の魔女にもなった。勇者たちから犯し殺された。
王太子ではない男と ーーー 騎士の男と恋に落ちたこともあった。
男はわたくしを連れて逃げた。本気で愛し、愛された男は殺され、腹に宿った男との子供は引き摺り出されて食べさせられた。
わたくしはもう抵抗するのをやめた。
何度やり直しても同じ。……いいえ、わたくしが抵抗すればするほど悍ましい未来が待っている。
何度死んだだろう。わたくしは人形のように……いいえ、まるでゲームの中のNPC…ノープレイヤーキャラクターのように無機質に生きては死んだ。
ああ、今日も夕陽が赤い。
わたくしは断頭台に自ら歩く。
髪が切られ、跪いて断頭台に首を差し出す。
この頃になると、一度で終われるように、どういう位置で角度なのかとわかるようになった。
けれど、今日は違った。
隣国の ーーー 秋津國の侵攻だった。
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