【異世界大量転生3】異世界とかよくわかんないけど、とりあえず好きに生きる。

とうや

文字の大きさ
上 下
21 / 49

閑話:魔女01

しおりを挟む


無垢なる魔女。それがわたくしの役割らしい。

役割に気付いたのは断頭台の上。

ああ、この血のように赤い夕陽。シミの落とし切れない、刃の錆び付いた断頭台。粗末な服を着た見物人たちの、狂ったような歓声。

ここはゲームの世界だ。

前世でたくさんプレイした乙女ゲーム。もう……タイトルさえも覚えていない。だけど、この夕陽と断頭台のスチルだけは覚えていた。

わたくしは教会で魔女。蝶よ花よと教会で育てられ、王太子の婚約者になって ーーー そして、ヒロインに全てを奪われる

そう、この国は『無垢なる魔女』を神に捧げる事により保っている。10年に一度、生贄は捧げられる。

ああ……ああ、ああ、ああああああああ………。

笑っている。みんな笑っている。

わたくしの自慢の髪は切られ、なんとも言えない臭いのする断頭台に押さえつけられる。

笑っている。愛する婚約者が。憎っくき恋敵が。神父様おとうさまが。陛下が。王妃が。友人が。民衆が。

この国を守護する神様が、笑っている。

 ーーー 一度では首は落ちなかった。

何度も何度も失敗して、苦しんで苦しんで苦しんで……ようやくは終わる。



そして朝が来た。



そう、わたくしは時戻りをしていたのだ。10年前の、あの先代の魔女の死んだあの日に。

今度はわがままなんか言わない。ヒロインも……いいえ、誰も虐めない。王太子に愛を押し付けるだけではなく、愛される努力もしよう。

それでもダメだった。

わたくしはまた首を撥ねられる。

次は王太子との婚約を拒否した。

わたくしは王太子に大勢の前で犯された。

傷物になったわたくしは王太子の婚約者として生きていく他はなかった。

次は逃げ出した。

わたくしは捕まって幽閉され、そのまま18歳の誕生日に死んだ。

その次は死のうとした。

わたくしは手足を外科手術で切り取られて生かされ、18歳の時に断頭台の前に引き出された。

この国を呪う本物の魔女にもなった。勇者たちから犯し殺された。

王太子ではない男と ーーー 騎士の男と恋に落ちたこともあった。

男はわたくしを連れて逃げた。本気で愛し、愛された男は殺され、腹に宿った男との子供は引き摺り出されて食べさせられた。



わたくしはもう抵抗するのをやめた。



何度やり直しても同じ。……いいえ、わたくしが抵抗すればするほどおぞましい未来が待っている。

何度死んだだろう。わたくしは人形のように……いいえ、まるでゲームの中のNPC…ノープレイヤーキャラクターのように無機質に生きては死んだ。




ああ、今日も夕陽が赤い。

わたくしは断頭台に自ら歩く。

髪が切られ、跪いて断頭台に首を差し出す。

この頃になると、一度でように、どういう位置で角度なのかとわかるようになった。

けれど、今日は違った。










隣国の ーーー 秋津國の侵攻だった。











しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました

西楓
BL
乙女ゲームのサポートキャラとして転生した俺は、ヒロインと攻略対象を無事くっつけることが出来るだろうか。どうやらヒロインの様子が違うような。距離の近いヒロインに徐々に不信感を抱く攻略対象。何故か攻略対象が接近してきて… ほのほのです。 ※有難いことに別サイトでその後の話をご希望されました(嬉しい😆)ので追加いたしました。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

【完結】だから俺は主人公じゃない!

美兎
BL
ある日通り魔に殺された岬りおが、次に目を覚ましたら別の世界の人間になっていた。 しかもそれは腐男子な自分が好きなキャラクターがいるゲームの世界!? でも自分は名前も聞いた事もないモブキャラ。 そんなモブな自分に話しかけてきてくれた相手とは……。 主人公がいるはずなのに、攻略対象がことごとく自分に言い寄ってきて大混乱! だから、…俺は主人公じゃないんだってば!

悪役令嬢の兄、閨の講義をする。

猫宮乾
BL
 ある日前世の記憶がよみがえり、自分が悪役令嬢の兄だと気づいた僕(フェルナ)。断罪してくる王太子にはなるべく近づかないで過ごすと決め、万が一に備えて語学の勉強に励んでいたら、ある日閨の講義を頼まれる。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

処理中です...