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閑話:フィリップ01

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「馬鹿者が!!」


水の入っていたグラスを投げつけられる。

国王陛下が ーーー 父上がやっと外遊からお帰りになられ、一息付いた時の事だった。


「やっとで漕ぎ着けた秋津國との縁を台無しにしたばかりか……あの、レストを手放した、だと!?」


突然の叱責。私は何が起こったかわからずに立ち竦んだ。


「レストは玩具おもちゃではないとあれほど言うて聞かせたであろう!アレは……!」

「せ…、《聖女》を人工的に誕生させる過程で産まれた失敗作……と…」

「そうだ、亡き王妹いもうとが手掛けた最期の『作品』だ。浄化も回復も持たない失敗作……だが、アレは史上最悪の殺戮兵器だぞ!?」

「…え……」

「妹は、アレに『レスト』という人格を植え付けるのに6年かかった。6年だぞ?!その間にアレが何度脱走を企てて、何人死んだと思っている!どれだけの施設が破壊され、どれだけ損害が出ていると…!!」


なんだ……なに、を、言っているんだ、父上、は………。


「妹は、アレにありったけの洗脳魔法を注ぎ込み ーーー 帰れぬ国へと旅立ったというのに…。お前は何を聞いていたのだ、なにを勘違いしていたのだ!?しかも、アレは…『レストは死んだ』と言っていたのだろう?……馬鹿者が…っ!この大馬鹿者が!!!」


レストは……あの抱き人形は………いつだって俺の後ろに控えて。何をしても、絶対に従って……。


「お前のせいで近隣諸国の……いいや、世界の均衡が崩れるぞ。サヴァレーゼに《聖女》の一人や二人居たとて押さえ切れるものか!アレは化け物だ!アレが秋津國に渡ったのだぞ?絶望の始まりだ…!!」


私が抱く時だけ、ほんの少しだけ……表情が緩む。快楽と、愛欲と、 ーーー 独占欲に。


「もういい!お前は廃嫡だ!!いいやいっそ……お前の命で秋津に謝罪を………」



ドッ……


「………………あ…?」



父上の胸から剣が ーーー 生えていた。


「あ、あ、あ……」


「え……?」







芝居のように膝から崩れ落ちる父上を、私はどこか他人事のように見ていた。


















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