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06 匂いを嗅ぐな

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降ろされた先は国境を越えた場所なんだろう。

ロタリンギアの白っぽい地面じゃなくて、黒っぽい土。栄養ありそうだね!ロタリンギアの作物って枯れるわ病気になるわ虫にやられるわで育たないもんなあ…。まあ、だから聖女に頼っちゃうような聖女信仰なんだけどな?

空の散歩中にアイコと勝手に名付けた葦毛の牝馬を労う。ちなみに名前の由来は、前世で俺をペットとして拾ってくれてたホステスの愛子さんからだ。エロい感じの良い女だった。

待機していたと思しき真っ黒い馬から誰か降りてくる。そして全速力でこっちきた。こわいこわいこわい。瑞穂チャン逃げ………

と思ったら俺の方だった。


「刹那…!!」

「うわ!」


ガバァッと抱きつかれて、そこからぎゅうぎゅう締め上げてくる。やばい。街道封鎖されて魔方陣組まれた時よりやばい。こっわマジこっw………あれえ???


「…なんだ、お前、涼音じゃん?」

「あああ刹那!やっと…!やっと会えた刹那!!会いたかった!刹那!刹那!」


おおう…。

前世の幼馴染の一橋涼音ひとつばしすずねだった。

前世で、こいつのとーちゃんがのお得意様だった関係で、俺たちはまでよくつるんでいた。俺があの息の詰まる教団を逃げ出したあの日まで。

別にアレだよ。オッサンどもに犯されるのが嫌だったとか、禊とかいって唇が紫色になるまで滝に打たれるのが嫌だったとか、そういうんじゃなくて……あ、いや、嘘です嫌だったけど。俺は何がを探しに飛び出した気がするんだ。


ああ、


そう、俺は教団あそこから逃げ出した。

それがなんだったのか、今でもわからないけど。だって14歳くらいから相手を変えながらふらふらしてたけど、終いには人混みうろついてる理由すら忘れてたし。

……っておい。人が感傷に浸ってる時に匂いを嗅ぐな。体を混ぜくるな。見てる見てる絶対ギャラリーがガン見してるから!しかも俺、今、返り血でカピカピだからな!?


「兄上様…?主人様が困っていらっしゃいますおやめください」


さすが瑞穂チャン!


「屋敷に帰ってからゆっくり……ですわ?ね?」


…………サスガミズホチャン…………………。








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