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01 壊れた
しおりを挟むドン!と背中を押された。はぁ!?と思って、倒れ込みながら体をひねる。ちょっと待て。クラクションがうるせえし、ヘッドライト眩しい。視界が激しくブレる。
他人事のように撒き散らされた血が赤かった。
ただ、それだけ。
バチン!と首に衝撃きた。
………え?なに?
俺は首に手をやる。何かの破片が手に触れて、それを抓んでじっと見た。
黒い破片だ。隷属の首輪の成れの果て。
隷属の……って、何を言ってるんだ、俺。俺は……俺、は…………?
ンンン???
首を傾げる。
目から水が出てることに気付く。適当に拭うと、目の前の男がニヤニヤ笑っていた。
「レスト、もうお前は必要ない。瑞穂と共謀し、我が聖女マリベルを殺そうとしたお前を、私は許さない!何処へなりと行くがいい!!」
え?なにこのコント?
「そして瑞穂!私はお前との婚約を破棄する!!」
「……正気で御座いますか、フィリップ様?」
「正気だとも!我が聖女を害するような女、国の為でも許し難い!」
ええええええ……。
俺はぐるりと見回す。
ピンクにブルー、緑、蛍光色の赤……と、人間ではありえない非常にバラエティーに富んだ髪色が並んでいる。目に優しいのは瑞穂とか呼ばれた美少女の黒髪だけだ。
「お…おと……お兄さま!私…私……!お兄さまに謝って頂ければ…!」
ピンク髪が俺に向かって叫ぶ。
なに?え?お兄さま?俺、あの頭悪そうなピンクのにーちゃんなの?
…………ないわー…。
ああ、あれか。直前まで、なんとかっていうアニメ観てたから?
可笑しすぎて笑いが出るね。
思わず笑うと、周囲が息を呑んだ気配がした。
「なにがおかしいんだレスト!?」
レスト、と呼ばれて、じわりと色々な記憶が流れ込んでくる。
「……ふふっ………ああ、そう?俺、レストっていう名前だったな?」
『レスト』の中に有るのは、荒れ狂わんばかりの青髪への恋情と、ピンクへの嫉妬。そして……
『レスト』は壊れた。
壊れて、非合理的かつ非生産的な行為に及んで、青髪 ーーー フィリップに捨てられた。
きっとあの『隷属の首輪』が壊れた時に、レストの人格は死んだんだろう。
「………素敵…兄上様の言った通りだわ…!」
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