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【王妃視点】
しおりを挟むああ、ようやくだ。わたくしは長かった20年を思い返す。
つらくて、くるしくて、長かった。憎くて。憎くて憎くて憎くて憎くて。
わたくしは刃を背中に突き立てる。あのお方がわたくしに、と贈ってくださった守り刀。
憎くて。
憎くて、憎くて、憎くて。
わたくしは呪詛を唇にのせる。
すぐには殺さない。苦しんで。苦しんで、苦しんで、苦しんで。苦しみ抜いて死ね。
知っていた。
この男がわたくしの婚約者を。ジーク様を殺した。帰ると。必ず帰ると誓ったあの方を奪った。わたくしの胎の子が不義の子だと父に吹き込み、騙すようにしてわたくしを拐った。
ジーク様を殺した相手に陵辱され。産んだ子供を一人殺されて。
憎い。
憎い、憎い、憎い。
嫁いで、何度も何度も仇を討つ機会はあった。でも駄目だ。この男の、獣以下の所業が明るみに出てからでないと、ジーク様も、もう一人のあの子も救われない。
だから計画した。
セオドアが見つけやすいようにヒントを出した。あの子が気付くように。あの子の父親と、双子の兄弟が何をされたのかを知るように。わたくしは酷い母親だ。けれど、そうしなければならないと。何故か強く思った。
あの子なら大丈夫、エマがいる。シェパード卿も。
もう、いいの。
ああ、セオドア。あなた、ジーク様にとても似ているわ。似ているからこそ、わたくしは貴方が手を汚すことは望まない。
可愛い可愛いセオドア。わたくしとジーク様のこども。
ああ、ああ、ああ。女神様。どうか。どうかこの子をお許しください。罪は全てわたくしに。罰も全てわたくしに。
ほら、女神の泉が赤く濁る。女神様、女神様。罪はわたくしに。罰はわたくしに。
憎きジーク様の仇が、泉に倒れ込む。
真っ赤な水飛沫は
瞬きの間に黄金へと変化していた。
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