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頭がおかしいのかしら、この方?
しおりを挟む双子はすくすくと大きくなります。わたくし思うのですが、この子たちが黒髪なのにどこからも追求されませんのよ?
ケイレブはもはやわたくしの護衛というよりは、走り回る双子の捕獲係。まるで新米パパですわ。仕方ないじゃないですか。だって双子はケイレブになら大人しく捕まるのです。
予感はあったのです。
セオドア様とシャーロット様の結婚式に黒いレースを、ケイレブの色を纏ったわたくしを誰も非難致しませんでした。週刊誌もなかったかのようにそれには触れませんでした。そしてお父様がとても静かなのです。
穏やかに、けれど水面下でなにかが動いています。わたくしは知らないふりをしながら、その時を待つのです。
その中で、ケイレブとわたくしに面会の申請がありました。側妃宮では毒物混入事件以来、外部への接触は許可制になっております。もう少しこの双子が大きくなれば徐々に解放予定ですが。
面会の申請者はシェパード公爵代理。そう、ケイレブのお父様ですね。
わたくし、正直に申しますとこのお方は嫌いです。大嫌いです。わたくしの感情が『嫌い』の方に振るなど自分でも珍しいと思いますが、その名を聞くだけでケイレブに初めて会ったあの日を思い出すのです。
腕を吊り、足を引き摺り、顔を包帯だらけにして。紺碧の瞳は恐怖で濁っていました。毛先が燃えたようにチリついた髪はめちゃくちゃに切られているようでした。あの様子を見て、わたくしはこの子を守らなくては、と思ったのです。小さなケイレブは前世の死の間際のわたくしでした。理不尽に嬲られ、甚振られ。恐怖と不安に支配されたわたしだったのです。
側妃宮には一歩も入れたくなかったので、お城の四阿をお借りいたしました。もてなされるとでも思っていたのでしょうか?お茶も出さない対応に、とても落胆された様子です。
「それで、私の孫は?」
ケイレブに「元気だったか?」と聞くわけでもなく、側妃に挨拶をするわけでもなく、開口一番にシェパード公爵代理は言いました。
「宝石瞳の私の孫です。さあ、早く連れてきてください」
頭がおかしいのかしら、この方?
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