側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。

とうや

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わたくしも妻だから浮気ではありませんが

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その日は早朝に起こされ、「王太子殿下が朝食をご一緒にとのことです」と全身を磨かれました。別に至近距離に寄るわけではないので良い匂いの香油はいらないと思うのですが?


「エマ様が麗しく、馨しい香りがするとアーミテイジ様や侍女一堂のやる気が上がります」


あらまあ?アリサはわかりますが侍女たちもですか?

朝食はこちらの側妃宮で取りたいそうです。レシピは公爵邸のもの。輿入れに際して、お父様はサイモンを連れて行けば良いと仰ったのですが、お父様に忠誠を誓う私兵を連れていくのもですねえ?なので、公爵邸でサイモンにバシバシ扱かれたわたくしのカフェの子を数名連れてきました。

セオドア様がシャーロット様をお連れになっていないのを不思議に思っていると、「シャーロットは今日のお出かけの支度中だよ」と…。

まあ…なるほど。今日は本妻が忙しくしてる隙を突いて浮気をする悪い男の演出ですか。わたくしも妻だから浮気ではありませんが。あら怖い。パティとケイレブ以外のそこかしこから殺気が…。セオドア様、ヘイトを集めるのは程々になさいませ?

セオドア様は側妃宮のシンプルな朝食を「懐かしい味がする」と喜んで召し上がりました。その後「出かけるから見送っておくれ」とわたくしの髪を弄りながら芝居じみた甘い声でおねだりです。

わたくしは知っています。セオドア様が本気ならば甘い声など出さずにさっさと手を引いて歩き出すのです。


「ではお見送りいたしますわ」


多分、シャーロット様に睨まれるでしょうけど。

馬車乗り場までセオドア様をお見送りすると、やっぱりシャーロット様は目を吊り上げて吠えてきました。まあ、お元気ですわね。

浮気者!酷い!とか叫んでいますが、わたくしはそれよりシャーロット様のお召し物が気になります。なんというか……ええ、本日も個性的ですこと。


「ああ、そうだエマ、これを貸してあげるよ」


シャーロット様を宥めながらセオドアがわたくしにポイッと放ったのは……


「……印璽…でございますね」

「そう。貸してあげるから私の分までやっておいて」


皆様が息を飲みました。わたくしに無造作に放られたのは王太子殿下の印璽だったのです。

あらあら、まあ……セオドア様?このパフォーマンスが今日の狙いですか。テーマは『仕事をしたくないから側妃に丸投げして、大切な印璽さえ軽んじるうつけ者』ですね。

にこにこと笑うセオドア様と、わたくしに仕事を押し付けてやったと溜飲を下げるシャーロット様。周囲の驚きと、怒りと、呆れの気配。きっとセオドア様は箝口令を敷いたとしても噂になる場所をお選びになったのです。

この方……お顔と頭は良いのですが、性格が悪いのですよね。








「承りました。行ってらっしゃいませ」









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