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7 最終話
しおりを挟む半月前、夫が愛人と蒸発した。結婚して10日後の出来事だった。2人の部屋の私物はほぼ無くなっていた。私の部屋の金目の物もごっそりと無くなっていた。
警ら隊が事件性を調べに家まで来たが、「新婚初日から新居に愛人を連れ込むという事をされたので近々離婚するつもりだった」と言いながら、実家に保管していた証拠書類を取りに行く様に言うと帰って行った。
どうやら実家でも私のことを調べたようだが、結局何も出てこなかったらしい。
当たり前だ。だって私は何もしていない。
「……で、雌猫のほうの引き取り手は見つかったの?」
私の言葉にジョエルは笑った。
「ああ、良い所に貰われて行ったよ。今頃、優しいおじさんに可愛がられてるんじゃないかな?」
「そう……雄馬は?」
「ああ…アレね?俺の元恋人にあげたら気に入っちゃってさあ?確り調教されてると思うよ?」
「ふふ…悪い男ね」
「男はちょっとくらい悪い方が魅力的だろう?」
「ええ…まあねぇ?ちょっとなら、ね?」
ああ、どいつもこいつもみんなクズだ。私も含めて。
「ところで貴方、いつまでこの家に居るつもりなの?元恋人が新しい雄馬に夢中ならもう熱りは冷めたんじゃないの?」
「ええ…ひっでえ。もう用無し?ポイなの?酷いよ…」
「家族でもない未婚の男女が、2人っきりで一つ屋根の下に住むものじゃないわ」
「ああ、それね?大丈夫、俺とシンディー、昨日婚姻が受理されたから」
「………は?」
「親父が手を回したらしいよ?」
「は?」
「シンディーのじいちゃん、雄馬より俺が良いってさ」
「き…聞いてないわよ!?書類どうしたのよ!?私、そんなのサインとかした覚えは無…」
「ガキの頃、一緒に結婚ごっこしたじゃん?あれ使った」
「8歳くらいの頃じゃないの!?嘘!詐欺じゃない!!」
「シンディーの親父さんとお袋さん、もう誰の子でも良いから早く孫が抱きたいらしいよ」
「あ…あああ、あんたとなんかお断りよ!あんたあっちこっちに愛人がいるじゃない」
「馬のご主人様が最後まで俺と別れるの渋ってた男だから。恋人とは全員別れたよ」
「ええ~…」
「俺、頑張ってシンディーのために別れたんだから。責任とってよね」
「ちょ……ジョエル?あんた、…まさか、これ、計画的な……」
「これからよろしくね、奥さん」
ジョエルは蕩けるみたいに笑った。
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