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6 side モーリス
しおりを挟むおじいさまが騙す様に取り付けてきた婚約だった。
王都で、いやこの国で指折りの大商家の娘。成人した今では、ドル箱である貴族女性向けの部門を任されている女。美しく、出しゃばらず、痒いところに手が届く。そんな女だ。話題も豊富だが、女としては賢すぎて可愛くない。女性とエイミーのような少し馬鹿で愛嬌がある方がいい。
公爵家の娘を母に持つシンディー。アディントン公爵家はシンディーの母が一人娘で後継はいない。駆け落ちした娘の産んだ子を後継にするのだろう。そう言う噂が社交界ではまことしやかに囁かれていた。
伯爵家の五男。文官か騎士しか将来が選べない僕だったが、母上に似た顔だけが取り柄だった。シンディーは僕の美しさに骨抜きになった。
いずれアディントン公爵家はシンディーが継ぐだろう。僕が公爵になることはないが、婿として公爵家に入れば多少の自由はきく。可愛いエミリエンヌを愛人にして、仕事は全てシンディーに任せたら良い。
そう……思っていたのに。
シンディーには愛人がいた。大公家の庶子だ。ヘラヘラした遊び人風情のあの男。なんと言うことだ。女のくせに。所詮は平民か。
しかもあんな優男にエミリエンヌは媚を含んだ声で近付く。平民に?大公殿下が平民に産ませた子供に。
「庶子でも利用価値はあるわ」
エミリエンヌは笑った。……そうか。そうかもしれない。だがエミリエンヌは僕のものなのに……
今日はあの優男とエミリエンヌが出かけるらしい。シンディーに「気分が悪いから今日は休む」と言って家から追い出した。寝室に籠っていると、エミリエンヌと優男が連れ立って出かけていくのが見えた。
僕はその後ろ姿を追いかけ…………
世界が暗転した。
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