2 / 7
2
しおりを挟むあの後。自分がいかに幼馴染を大事にしているかを懇々と説かれた私は諦め……
るわけねえだろこのクソ女にクソ男!?
男女の友情を信じないとか言わないよ?だって私にだってこれっぽっちも男を感じない男友達が居たりするし。でもね?これはないわー。
「じっちゃんたちに相談します」
「待ってくれシンディー!」
「ひどい!私を追い出すのね!?」
「追い出すも何もここは私の!うちのじっちゃんが買ってくれた!私たちの!新居!でっ、すっ、がっ!!??」
いかんいかん。興奮しちゃったわ。
「エミリエンヌと同居したって僕たちの新婚生活には問題はないはずだ!」
「大アリだよこの馬鹿旦那」
「これは僕たちの問題だ……おじいさまたちを巻き込まないでくれ!」
「あっ…ふーん?……そう?私たちの問題なのね?」
プツンと何かが切れた。主に堪忍袋とか、愛情の袋とか、情けの袋とか。それはもう、ざらざらと落ちた。消えてなくなった。
お見合いして半年、デートは5回くらい。それでも『よし、結婚してもいいか』ってくらいの愛情はあったと思う。それが恋になる前に結婚して、愛になる前に砕け散った。
「いいわ、ここに住んでも」
「シンディー!」
「ありがとう、シンディーさん!」
「ただし、一筆書いてくださる?モーリス、貴方がどういう意図で、この家にエミリエンヌさんをどのくらいの期間住まわせるのか」
「「………え?」」
「ごめんなさいね?私、今日会ったばかりの人を全面的に信じる馬鹿でもなければ、口約束を信じる愚か者でもないのよね?」
「シンディーさん……ひ…ひどいわ…!」
「シンディー!!君は…!僕が信じられないのか!?夫婦は信頼し合うものだろう!?」
「モーリス?私の貴方への愛と信頼度はマイナスになってるの。今この瞬間も、貴方が私を怒鳴りつける度に急降下中よ」
「………っ…」
「大丈夫、お金を払えとか、そう言うことじゃあないの。エミリエンヌさんも新婚の家にズルズル居候する気はないんでしょう?そうよね?それが普通だものね?だから期限を区切って、誰が許可したのか。責任は誰にあるのか。そうでしょう、モーリス?」
「あ…、ああ……」
私は鞄から神殿に提出せずともこの場で誓約が受理される『白紙の誓約書』と『専用インク』を取り出す。輸入品だから多少値は張るが確実だ。
「き…君はいつもそんなものを持ち歩いて……?」
「商人ならば常識です。「言った」「言ってない」の水かけ論争は時間の無駄ですからね。……あ、あと、私の幼馴染も今住む場所がなくって困ってるんです。しばらく置いていいですね?」
「………は?」
「呼びますね?」
ニッコリ笑う。嫌とは言わせねえぞボンクラ旦那。
目には目を。歯には歯を。クズにはクズをぶつけよう。
171
お気に入りに追加
586
あなたにおすすめの小説
旦那様、愛人を作ってもいいですか?
ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。
「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」
これ、旦那様から、初夜での言葉です。
んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと?
’18/10/21…おまけ小話追加
頑張らない政略結婚
ひろか
恋愛
「これは政略結婚だ。私は君を愛することはないし、触れる気もない」
結婚式の直前、夫となるセルシオ様からの言葉です。
好きにしろと、君も愛人をつくれと。君も、もって言いましたわ。
ええ、好きにしますわ、私も愛する人を想い続けますわ!
五話完結、毎日更新
大きくなったら結婚しようと誓った幼馴染が幸せな家庭を築いていた
黒うさぎ
恋愛
「おおきくなったら、ぼくとけっこんしよう!」
幼い頃にした彼との約束。私は彼に相応しい強く、優しい女性になるために己を鍛え磨きぬいた。そして十六年たったある日。私は約束を果たそうと彼の家を訪れた。だが家の中から姿を現したのは、幼女とその母親らしき女性、そして優しく微笑む彼だった。
小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しています。
婚約破棄されなかった者たち
ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。
令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。
第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。
公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。
一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。
その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。
ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
「お前を愛することはない」と言った夫がざまぁされて、イケメンの弟君に変わっていました!?
kieiku
恋愛
「お前を愛することはない。私が愛するのはただひとり、あの女神のようなルシャータだけだ。たとえお前がどんな汚らわしい手段を取ろうと、この私の心も体も、」
「そこまでです、兄上」
「なっ!?」
初夜の場だったはずですが、なんだか演劇のようなことが始まってしまいました。私、いつ演劇場に来たのでしょうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる