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閑話:令嬢ジュゼッタ4
しおりを挟む「ジュゼッタ・ケンドリック!貴様との婚約は破棄するッ!!妹であるペネロピを虐め抜き命までも脅かした罪、私はお見通しだ!!」
???
あら?なにが始まったのかしら?お遊戯会ですの?
「お前のような心根の腐った女は国母に相応しくない!!貴族籍剥奪の上に国外追放だッッッ(ドヤァ!)」
「あらあらまあまあ?殿下?また発作ですの?」
これはアレですわ。えむ淫えー先生の言う『突っ込みどころ満載』とかいう事案ですわね。
「婚約破棄はいいとして」
「いいのか!?」
「わたくしに妹はおりませんわ」
「酷いわお姉様!!わたくしのお父様はケンドリック伯爵ですぅ!」
「あら?まあ、お父様の愛人の方に男爵家の女性もいらっしゃったのですね」
「酷い!そうやってまた私を蔑むんですね!!」
「国母に相応しくない…とは、え?殿下???王位継承権4位ですのに王位に就くつもりですの???」
「私以外に誰がいるというのだ!?」
「ああ…ええ……、殿下、今度は誰になにを吹き込まれましたの?すごい自信ですわね。それに……わたくし、一昨日から貴族籍から外れましてよ?」
「………は???」
「え…?」
「両親の離婚が成立しましたの。母は昨日からもうナイトレイ強制帰国…ではなく、実家に帰っておりますわ。わたくしとお兄様の親権はお母様が捥ぎ取り……ゲフン!お母様に移りました」
「「聞いてないぞ!?」」
「お兄様にも今言いました。だってお兄様、すぐお顔に出てしまうんですもの…」
「え……え?り…離婚、したの?…あ、あのぉ……私もケンドリック伯爵から聞いてないんですけどぉ……?」
「お父様だったケンドリック伯爵には愛人がたくさんいらっしゃいますからね。あの方、屑ですがお顔だけはお美しいので。おそらくまだペ…さんのお母様まで順番が回っていないのでしょう」
わたくしは殿下にしっかりと向き合いました。
「婚約破棄に国外追放…でございますか」
「…っ!そうだ!!貴族でもない捨てられた女が私の妃になるなどあり得ぬだろう!!そのように腐った性根だから母娘共々捨てられたのだろう!!」
「わたくし腐っておりますが、捨てられてはおりませんわ。捨てたのです」
「ええい世迷言を!!」
「では誓約してくださいませ」
「ああ!この私、スタンリー・ドーンはただのジュゼッタと婚約破棄する!!貴様は国外追放だ!!罪人め!!何も持ち出すことは許さぬ!!」
「もう一声」
「二度と私とペネロピの前に姿を見せるな!!今すぐに出ていくが良い!」
「はい、それから?」
「そ…それから……それから、そうだ!今この場で床に頭を擦り付けペネロピに謝ればひとつだけ私物の持ち出しを許してやろう!ペネロピに……!!」
「はい、かしこまりました」
わたくしはペ…さんの前に膝を突き平身低頭した。ざわりと見物人たちがさざめく。
「ペ…なんとかさん、お話ししたのはこれが初めてでございますが、このわたくしのなにかが癪に触られたのでしょうね。ご不快な思いをさせて申し訳ありませんでした。二度とお会いすることはございませんが、どうぞ末長く殿下とお暮らしくださいませ」
「……っ……!!ジュゼッタ…!」
「さて、誓約は成りました。お約束通りひとつだけ持ち出しますね」
「まてジュゼッタ!なぜ笑顔なんだ!?な…泣かないのか?泣いて縋れば平民であろうと私の愛人くらいにはしてやるのに!?…というか誓約!?え?え?!」
「そちらに座ってらっしゃるお爺さま」
「……は?ああ…うん、あの小汚い……」
「大神デウス様ですわ。出張して来て頂きました」
「はあ!?」
『誓約は受理された!……ジュゼッタよ、後でご主人様の前でワシのことを褒めちぎっておくのじゃぞ?な?頼むぞ!マジで!!』
「任せてくださいませ!」
わたくしは立ち上がり、笑顔に《魅了》を乗せます。え?ええ、使えますよ?このくらいの《魅了》、使えないとおナイトレイの大お婆様に笑われてしまいますわ。グレン様のように強烈ではありませんが、ペ…さんの《魅了》を剥がしてわたくしに移行させる事くらいはできますのよ?
「さあ、行きましょう、お兄様」
わたくしはお兄様に微笑みます。
ええ、置いて行ったりしませんよ?お兄様は大切なわたくしの家族ですもの。
お兄様は第三王子殿下の側近候補でございましたが、もうお兄様もロメオ・ケンドリックではなくただのロメオですし、持ち出させていただきましょう。
「ジュゼッタ…!」
お兄様が駆け寄りわたくしを抱きしめます。………あら?あらあらあら???思った展開と違いますわ???
「愛してる!結婚しようジュゼッタ!!」
「はい????????」
わあっと歓声があがります。はい???結婚?誰とです???わたくしが首を捻っているうちに、お兄様はわたくしを横抱きにして颯爽と歩き出しました。こ…これは姫抱っこというやつですか!?是非ともグレン様と妻のどなたかで見たいですわね!!
ところでお兄様?これって……どういう展開ですの???
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