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のど自慢大会とジュゼッタ嬢

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雪祭りの初日と最終日はナイトレイ家主催のイベントがある。その中の一つが『ナイトレイのど自慢大会』。……うん、ネーミングどうかと思うよ?でもまあ内容はすごい。異世界に演歌とかないから歌うのはオペラみたいな曲。しかもアカペラ。声は雪に吸われちゃうから声量とかもいるしね。しかも歌声に精霊が引き寄せられてきて、まあ中々の綺麗な光景なんだ。

今年はなんとデウスさんたちも聴きに来た。出場者が緊張しちゃうからちゃんと人間の振りしてねって言ったんだけど、ねえ君たちどこの王族のお忍びだよって感じだ。仕方ないからVIPボックスに押し込めた。え?めんどくさいからじゃないよ。うん、めんどくさいけど。まあワインとかおつまみ頼み放題だから大人しくしてて。《桜座》と《奈落》も、嫁やら愛人共々別のVIPボックスに押し込んだ。あいつらの顔見ながらボーッとしちゃう客が多発したせいだ。歌を聴け歌を!いいかそこの坊ちゃんお嬢さん、あいつら顔は良いけど性格最悪だからな!?

で、のど自慢大会。

今回はものすごくハイレベルな戦いだった。歌にうるさい精霊たちが甲乙つけ難くウンウン唸って決めてた。優勝者はジュゼッタ・ケンドリック伯爵令嬢。審査員の雪の女王イチオシの歌い手だ。ジュゼッタ嬢自身も雪の精かと思うほど儚げで可憐な美少女。なんとそのジュゼッタ嬢、ダリルの姪っ子だった。ダリルの上のお姉さんがケンドリック伯爵家に嫁いだんだって。しかも本人はドーンの第三王子の婚約者だって。優秀なんだねえ。

さて優勝者はご褒美がある。

ご褒美の内容は固定してないので、話し合いで決まる。ジュゼッタ嬢は未来の王子妃ともあって所作も完璧だった。うん、こんなお嬢さんが第三王子の嫁ならドーンを潰さなくて良いかもしれない。


「……それがですね…」


俺の言葉を聞いたジュゼッタ嬢が困ったように言葉を濁した。


「わたくし、近々第三王子殿下の婚約者の座を降ろされると思うのです」


………はい???


どういうことかと聞けば、なんと第三王子、男爵家のお嬢さんとお付き合いしてて、その男爵令嬢、結構な野心家で虎視眈々と王子妃の座を狙って仕掛けてくるそうだ。そしてハニトラに見事引っかかってる第三王子。ジュゼッタ嬢を悪役にして自分たちの恋のスパイスにしてるらしい。身分差や障害があっても真実の愛で乗り越える俺たちカッコイイとか思ってんだろうなあ……はあ…、ばっかじゃね?


「第三王子殿下との婚約がなくなるのは良いんですが……むしろわたくし自身と致しましてはあのバ…ではなく、少し頭の残念なお方に嫁ぐのはどうかと思っていたというか……」


バカって言いかけたよジュゼッタ嬢www


困ったように頬に手を当てるジュゼッタ嬢は大変可愛らしい。可愛らしいが、口から出るのはさすがドーンの女。容赦がない。あっ、怖い。ジュゼッタ嬢への仕打ちを聞いたダリルが怖いwwwすっげえ殺気www


「じゃあうち来る?」

「是非!!!」


おっと食い気味にOKもらっちゃったよ。


「まあそれはご褒美の範囲外って事で、何が良い?」

「ええ…移住がご褒美だと思ったのですが……あ、そうですね!お仕事が欲しいですわ!住むのはナイトレイのお祖父様のところに転がり込みます!」


中々に逞しくアクティブなお嬢さんだ。嫌いじゃないよ。むしろ好き。


「あとは『白紙の誓約書』を買って帰ろうと思います。サインさえさせればこっちのものですわ!」


わあ。計画的犯行wwww


ドーンでは、ナイトレイは朝は番犬、夜は猟犬って揶揄されることがある。

その名の通り、主人が誠実なうちは家を守る優秀なだが、獲物を追う時は冷酷なになる。

……詰んだ、と思う。ばっかだなあ第三王子。あのきょうだいマトモなのって第一王子だけかよ!?


「じゃあね?ジュゼッタ嬢、俺から提案があるんだけど…」


悪戯を思いついて俺はニンマリ笑う。

ゴニョゴニョゴニョゴニョゴニョ…。


「まあ…!よろしいんですか?」

「うんうん。やっちゃえ!」

「はいっ!」







ああ、楽しみだ。してもらおうかなあ。












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