【異世界大量転生5終】辺境伯次男は鬱展開を全力で回避する

閑話:公爵令嬢マーガレット2

今まで使っていた化粧品が無くなって３日。食事の内容が酷くなって20日。目に見えて肌が荒れてきた。イライラが酷い。

髪を梳く時に縺れて引っ掛かって自慢の髪が抜ける。髪結いの侍女を扇が折れるまで打って首にした。


ああ、どうして？どうして？


パーティー用に急遽作らせたドレスは、なんだかもっさりしていた。おかしいわ。わたくしの体はもっと折れるように細いのよ！？腰回りに余計な飾りを付けるなんておばあさま世代でしょう！？それになに、このドレスの色！派手すぎてわたくしの個性を殺してしまうわ！布地も分厚くて重いし！！

エスコートのエグバードも、なんだかどんどん色褪せて見える。おかしいわ。どうして？ああ、これなら地味だと笑っていた第一王子の方が素敵じゃない。

わたくしは伯父様に…陛下に涙を流しながらお願いした。


「陛下、わたくしもう限界ですっ！グレンとの誓約書を取り消すか、書き直してください」


陛下は難しい顔をされた。


「マーガレットよ、あの誓約書が燃えてなくなってしまったのは見ていたな？」

「はい…」

「あれはもう、我々人の身ではどうしようもないのだ。『受理』されてしまったのだよ。そして、受理した神は、その神の誇りにかけて執行する。あの『白紙の誓約書』とは、言わば神の呪いなのだ。それを撤回できるのは両者の合意のみ」

「で…！では！陛下からグレン・ナイトレイにお命じください！エグバード殿下ならいつでも……！！」

「お前たちとグレン・ナイトレイを取り持つような行為も呪いを受ける。……そう、言われなかったか？レイモンド商会の者に」

「………っ」


……言われた、気がする。もう御用を聞きに来ることはできません…と。


「抜け道はある。お前たちがその者に希わずに、自らの意思ででグレン・ナイトレイに進言した者が居れば、気付いて貰えるやもしれぬ」

「そんな…！」


それって、もしかして、グレンはもうわたくしたちのことなど忘れていると言うことなの！？こんなに！こんなに妻だったわたくしが苦しんでいるというのに！？

そういえば……

グレンは婚約したのだ。権力を持った実の兄と、お金持ちの若い商会長と、魔王を屠るほどの力を持った元勇者。結局は、自分の欲望のために男に尻を差し出すんでしょう！？ああ、でも……


もうすぐ、ナイトレイの独立と、グレンの結婚式だ。


わたくしやエグバードは当然呼ばれていない。ドーン王国からは1人だけ……そう、あの地味で大人しい第一王子が出席するはずだ。


わたくしは第一王子のもとへ先触れを出した。