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製塩からの魔王討伐の思い出
しおりを挟む魚市場見学も水産加工工場(予定地)視察も終わった。
やはりというかなんというか。樽に入れて海水で漬けた魚は美味しくなかった…。仕方ない。『塩』というものは、以前はこの国では高級品だった。輸入品だからね。その塩を大量に使ってまで長期保存しなくても…って思ったんだろうね?
え?海あるじゃん?って思うだろ?海の水はミネラルが強すぎて不味いんだ。ぶっちゃけ渋くてえぐい。
異世界。塩は岩塩に頼ってた…。
岩塩だって元は海水だが、あれは気が遠くなるような時間が経ってようやく美味い塩になる。で、最初に戻る。
え?海あるじゃん?って……。
まだ前世の記憶とか断片的だった頃、ちょっとバレたらヤバい気がしたから海水を樽で自宅に持ち帰り、煮詰めて濾過してまた煮詰めて濾過して乾煎りして。(※)
「ほら、塩だよ?」って兄ちゃんとレイの前に出したら2人とも固まってた。
海水を濾過するっていう発想がなかったらしい。
兄ちゃんとレイはすっごく悪い顔して2人で何かボソボソと話し合い、塩工場計画がスタートした。これ、俺が14歳くらいの時。この頃から兄ちゃんは独立を考えていたんだろう。
塩工場は構造が超極秘事項だ。表向きは水質調査だとかなんとかで、俺の研究室扱いだった。地下に貯蔵庫を大量に作って、海水の汲み上げから製塩、袋詰め、果ては並べて貯蔵まで全部魔道具。人間の手を使うのは、例え領民を誓約魔法で縛っても情報の漏洩は防げないと兄ちゃんが判断したからだ。おかげで俺は楽しく魔道具作らせてもらったんだけど。
で。塩が海から取れるようになってからも兄ちゃんは岩塩を輸入し続けた。国外から『塩の輸出止めるぞ?』っていうのが弱点だと思わせるために。
貯めに貯めた塩が一気に要るようになったのは魔王討伐の時。
議会の奴ら、ナイトレイ家が食料を全部出せって言い出した。
いや、まあね?近いよ?魔王領と隣接してるよ?でもね、いくらドーンの穀倉って言っても全部出すの!?俺が農作物の卸値に口出し始めて急に利益を出し始めたナイトレイの力を削ぐためにそこまでする!?
……兄ちゃんは出した。マジかよ!?
ただし、これ以降魔王討伐のことでナイトレイには口は出すなと、売られた喧嘩を高額で買ったらしい。こええ。兄ちゃん怖え。
ぶっちゃけ穀物はあった。今まで捨てられるようなもんまで食べれるレシピを俺が広げてたし。
問題だと思われていたのは塩だった。
********************************************
(※)海水からの製塩は、砂の混じってない海水を長時間煮詰めて煮詰めまくって白く濁ってきたらコーヒーフィルターで濾過して、液体の方を更に煮詰めて、白くザラッと結晶が出てきたらまた濾過して結晶の方を残して、仕上げに乾煎りします(*´ω`*)
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