【異世界大量転生5終】辺境伯次男は鬱展開を全力で回避する

閑話:魔術師クラリッサ2

痴情の縺れの噂話というものは本当に下世話で品がない。平民の私がそう思うのに、お上品な筈の貴族たちは下世話な噂が大好きだ。

今回パーティー ーーー 戦勝祝賀会は、グレン君の離婚とアレの話で持ちきりだった。




ナイトレイ家の次男に嫁いだ公爵家のマーガレット・ランチェスターが僅か1年で離婚。結婚後すぐに夫が魔王討伐に赴いたので『白い結婚』であった。


(まあ！余程食指が動かなかったのかしらグレン様は)

(いくら可愛くてもあの胸じゃねえ？)

(『妖精姫』自慢の顔も、『ナイトレイの大天使』の前ではぼんやりと霞みますからねぇ)


王太子エグバードは寂しそうにするマーガレット夫人の元に日参し、二人は『真実の愛』に気付く。


(ほほほ…王太子殿下は余程お暇なのでございますねぇ？)

(国の有事を下級貴族と勇者パーティーに任せてご自分は毎日女と会っていたのか。しかも新妻だろ？サイッテー…)

(……『真実の愛』？ああ、あの一度誓うと二度と離れられなくなる『物語と愛の守護神』の呪いのことでございますね…。まあ、なんて素敵！フフフフフ…)


帰還後、偶然に二人が抱き合っているところを見たグレン・ナイトレイは、笑顔で離縁を切り出したという…。


(抱き合って…どころか………ねえ？お若いって勢いがありますわね？)

(そりゃあ真っ最中なら旦那は笑うしかねえなあ……お気の毒ぅ…)


そのショックでグレン・ナイトレイは屋敷を灰になるまで炎で包み、戦勝祝賀会にも出ず、褒美も拒絶、慰謝料も請求せずにナイトレイ領に一人で帰っていった。


(新妻と住もうと建てた新居で、間男が先に寝室使ってたらそりゃもう燃やしたくもなるわね？)

(ああ…お可哀想なグレン様！！)

(やだぁ…でも～……ねぇ？王太子殿下って………婚約者どうするのかしらぁ？)

(この騒ぎを収めるために結婚を早めたそうよ？)

(……えっ？でも…王太子殿下が今日エスコートしているのは……)

(そうなのよね。まあ元々、大人しくて都合の良い女として婚約されたのですものねえ？身分も侯爵家だし……クスクス…)





死ねばいい。この下品なお喋りスズメども…！


私はあの子の元に急ぐ。











王太子の元婚約者。オルコット侯爵家ミュゲ嬢の元に。