【異世界大量転生5終】辺境伯次男は鬱展開を全力で回避する

閑話:魔術師クラリッサ1

クラリッサの好きな人が戦勝祝賀会で殺される予知夢ゆめをみたよ。本当にあの子が好きなら ーーー 攫って逃げた方がいい。


そうグレン君は言った。

殺される ーーー 予知夢。

グレン君やミナは不思議な予言をすることがある。転生者という異世界人の魂を持つ者はそうなのだろうか。

攫って逃げる？

いいえ、逃げないわ。私は唇を引き結ぶ。



攫って、一緒に行くの。



私はその日から動いた。戦勝祝賀会では、国王より今回の魔王討伐の褒美が与えられる。とんでもないお願いにならないよう、事前に聞き取りをされるのだが、私はあの子を望んだ。

国王や宰相は難色を示した。

良い縁談を、とか、いっそ爵位と領地を、とか…。私は首を縦に振らなかった。あの子がいい。そして意外にも私に協力的だったのはあの子の父親だった。

あの子とアレの婚約は、本人たちにも知らされずに静かに白紙に戻された。


「娘を……よろしくお願いします…」


あの子の父親が涙を流して言った。





「亡き妻の忘形見で、とても優しくて良い子なのです。良かれ、と思い縁談を受けたのが間違いでした…。ああ、ミュゲ…！私の可愛い娘！どうか、どうか…！！」