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閑話:勇者アルヴィン
しおりを挟むグレンが王都を離れる日。もう何もかもをすっぽかして傷心のグレンに付いて行こうと思った矢先にナイトレイ辺境伯から呼び出された。
なんだろう…。
グレンの兄であるジェラルド様には俺の気持ちなんてバレてる。バレまくっている。でもグレンが好きだ。グレンと俺とじゃあ身分が違う。でもいつか、『勇者』として武勲を積み重ねれば……
「単刀直入に言おう。君を弟の婚約者としてナイトレイ領に迎えようと思っている」
「…………は?」
なにを言っているんだ、この人は!?
タチの悪い冗談だ……とジェラルド様を見る。婚約者?グレンの?だってグレンは、この間離婚したばかりで…………。
「レイモンド・マーキュリーはすぐに私の意を汲んで即答したぞ?」
「レイモンド商会長が…?!」
どうなっているんだ?グレンの離婚は……それだけじゃないのか!?
「グレン・ナイトレイはドーン王家の由緒ある外戚オリバー・ナイトレイの第二子であり、類稀なる聖魔法と強大な魔力を持つ。此度の魔王討伐でも勇者パーティーの一員として多大な貢献をした。そして以前より多くの魔道具を開発し、レイモンド商会を大陸有数の大商会へと押し上げた。……わかるだろうか?」
「……はい…」
「公爵家のメス猿……ではなく、ああ、なんと言ったかあのクソ女。アレだ。アレと結婚させていても「第二夫人に」との釣書は少なくない数が送られてきていた。だがこの度の離婚で状況がガラリと変わるだろう」
「…………」
「噂には聞いていると思うが、我がナイトレイ辺境伯領はドーン王国から独立する。長らく国の防衛だ穀倉だと無理難題を強いられてきたが、あの子をナイトレイ家に引き取って10年。ほぼ全ての問題が解消されたと言って良い。はっきり言おう。ナイトレイが独立すればもはやドーン王家は沈みゆく泥舟だ。あの子の素晴らしさを抜きにしても縁続きにはなりたい者は多い。しかもあの容姿に魔力に聡明さ。なにをしてでも…と頭の悪い者も多いのだよ」
ああ……そうか。この話、は……。
「そうだ。私はあの子の盾を欲している。見栄えがよく、頑丈で、あの子を決して裏切らない盾が。その盾をあの子が気に入って傍に置くのならもっと良い。盾には多少の褒美も用意している」
「……それが婚約、ですか…」
「そう。あの子ほどの者が配偶者が1人きりなどと、おかしいだろう?ただ、誰が正妻になるかというのはあの子次第だがね」
「つ……妻…!?」
「おや?嫌か?私はもう腹は括ったがな。形式などどうでもいい。あの子が欲しい。抱きたい。孕ませたい」
「は…!?はらま……???え、え……?え…、ま…まさか、ジェラルド様も婚約者になるおつもりですか!?」
「なにを言っているんだ。武力では君。経済ではレイモンド。政治では私だ。盾は多い方がいいのだが、まあ、あまり増やしても蹴落とし合いが始まりそうだからな」
「ええ~……」
正直言って勝てる気がしない。けれど…… ーーー 。
「お話は理解いたしました。この勇者アルヴィン、グレン様との婚約を謹んでお受け致します」
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