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クラリッサ鬱展開回避からの市場調査報告
しおりを挟む兄ちゃんはまだ王都に用事があるとかで、俺だけ先に帰ることになった。
当然、10日後に行われる戦勝祝賀会もガン無視。王家は和解アピールしたいんだろうけど、ナイトレイ家にとっても俺にとってもメリットが見当たらない。元々、ゲームのメインストーリーでは『聖者グレン』は祝賀会に出なかった。出れなかったんだよ死んで闇堕ちして勇者に滅せられてたし。
これでこの王都での心残りはあとはアレだけだ。
クラリッサ関係の鬱展開。
俺はクラリッサにだけこっそり耳打ちしておく。彼女はすごく驚いていたけれど、キュッと唇を引結んで覚悟を決めたようだった。
あとは王都を出る前に本気のお祈りを神殿でしておいた。多額のお布施とともに。
どの神様が対応に当たるかは知らないけどあちらの対応でこちらも考えを改めねばならない。神対応を望む。神だけに。
あー…あと。
ナイトレイ、独立するってさ。
1ヶ月後に国境を閉鎖するらしい。それに向けて、先に帰って国境線に壁を作ってくれと兄ちゃんにお願いされた。がってんしょうち。
1ヶ月で壁できるの?って思うだろ?できるんだなこれが。ちなみに俺がやるんじゃない。魔王討伐の旅の時に仲良くなった地竜に頼むだけの簡単なお仕事です。さっそく風精霊に伝言してもらったらすぐに快いお返事が帰ってきた。持つべきものは友達。
で、その壁の気になるお代は日本酒の試飲。……そう、まだ量産できてないから兄ちゃんにも内緒なんだけど、1年前にレイに作り方教えて仕込んでたやつ。なぜか試飲の2~3本があるってバレてて、それ届けるついでに一緒に飲もうって言われてる。バラしたのは多分悪戯な精霊の誰かだろう。悪い子め。
まあその宴会の時にちょっと会わせたい人(?)がいるらしい。予想としては異世界で日本酒飲みたい呑み助転生者。酒呑み友達ができるのは大歓迎だ。
スプリングの効いてないゴットゴットと尻が痛くなる馬車に乗ってナイトレイを目指す。ナイトレイ領内に入ったらそっこー乗り換えよう。独立するんなら鉄道引いてもいいかな。文明クラッシュはまずいと思って自重していたものを全部解放しよう。そうしよう。
「コウジを使った商品は中々伸びてるよ。グレンと同じ転生者が広めてくれてるみたいだね」
市場調査の紙を渡しながらレイが言う。嬉しそうでなによりだ。
俺は周囲には転生者であることを隠していない。最初は何言ってんだコイツみたいな目で見られたが、レイや兄ちゃんが「ああ、なるほど」って納得してくれてから普通になった。調べてみたら結構多いらしいよ転生者。有名どころは軍事国家エルトリアの黒獅子元帥ことレオンハルト王弟殿下。もう亡くなってるそうだけど。
見てみたかったなあ…。
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