【異世界大量転生5終】辺境伯次男は鬱展開を全力で回避する

閑話:従僕ダリル

私の従兄弟であり本家の庶子である主人は、ドーン国内随一の聖魔法の使い手だ。

グレン・ナイトレイ。

美しい純白の髪と、夜明けを思わせる紺碧と紫のグラデーションの瞳。母親譲りだという美貌。11歳まで庶子として下町で育ったグレン様は、所作こそ少々優雅さに欠けるが類稀なる発想力と強大な魔力を持つお方だ。

また、魔道具の開発者としても非常に有名で、グレン様が作ったものは確実に売れる。グレン様の幼馴染みだという商人の男は、グレン様にたっぷり稼がせて貰っている。……まあそれ以上にグレン様に貢いでいるから見ないフリをしているのだが。

そして一年前の魔王討伐で勇者に同行されたグレン様は、勇者や魔王をも虜にした。……そう、魔王は生きている。グレン様にお願いされて良い子になっているだけだ。

しかも隣国や魔王領に隣接しているナイトレイ辺境伯の一族は皆グレン様を溺愛している。浮気されていたナイトレイ前辺境伯夫人でさえ、「は？愛人の子？良いじゃない、可愛いんだから！」というデレっぷりだ。前辺境伯は隠居させられたというのに。


そのグレン様が御結婚されていたのが王家の血を引く姫君マーガレット・ランチェスター公爵令嬢だ。たった今、婚姻を解消されたが。


さあ、わかっているのだろうか、この事態を。


わかっていそうなのは宰相閣下とナイトレイ辺境伯、そして私。

今後、グレン様は二度と王都には出てこないだろう。いや、それどころかグレン様を馬鹿にされたと激怒しているジェラルド・ナイトレイ辺境伯は、ナイトレイ辺境伯領を独立させるだろう。ナイトレイ家は代々、王家からの妻を迎えていた由緒正しき外戚だ。前辺境伯夫人も現国王の姉。

そしてグレン様が誓約書に入れさせた『グレン・ナイトレイに一切関わらない』という文言。

わかっているのだろうか。

グレン様がナイトレイにいる限り、次期国王である王太子殿下はナイトレイに関われないということを。新しい発明品も、高級な魔物素材も、もう優先的に安く手に入らないということを。

良くて王太子の廃嫡。最悪は………



私は笑う。






うちの子を虐める馬鹿は滅べ、と。