【異世界大量転生1】乙女ゲームの世界に来たようなので、MMO気分で満喫することにした

閑話: 「あのクソが！今度はなにをした！！」《無名の騎士視点》

最初は微笑ましく見ていた。



俺はしがない子爵家の四男坊で、役所で働くか騎士隊に入るしか選択肢がなかったからここにいる。

最近、隊長の息子が小さいながらも訓練に加わり、ついでと言わんばかりに第二王子も訓練している。

まだ小さいのに大変だな、とか、第二王子って言えばものすごい問題児じゃなかったか？とか。そんなことをうだつの上がらない仲間たちと噂をしていた。

だがこの第二王子。付き合ってみれば王族なのに俺たちにも気さくに話しかけくれるし、礼儀も正しいし、普通に良い子だ。

剣の稽古も真面目だし、さすがはあの王妃様の子供……というかなんというか。とにかく強い。もう王子の相手は副隊長くらいしか務まらない。

ほんと、何であんな悪い噂が流れたんだろうか。



その王子と隊長たちの子供たちがつい最近、森の散策で迷子になった。



もう大騒ぎだった。

子供達の中には、世界的に有名な豪商の息子や、第一王子の一の姫もいたからだ。

護衛の騎士も数名いたし、侍女だってたくさんついていった。なのに迷子。

おいおいおいおい。大丈夫か護衛騎士さんたちよ…。

王族の護衛騎士っつったらアレだよ。エリート中のエリート！子守もできないの！？

第一王子が「あのクソが！今度はなにをした！！」って人目も憚らず叫んでた。こっわ。

まあ そりゃあね。自分の娘がいなくなったのが心配なのはわかるよ？わかるけど、いくら仲が悪いって言っても、あんなまだ子供の王子君がどうこうできるもんじゃないよね。

あ、そっか。王子君の悪い噂の出所は第一王子か…。

大変だなあ、王子君。



蜂の巣を突いたような大捜索の後、子供達はひょっこり帰ってきた。

「ごめんなさい！迷ってしまいました！」

元気に王子君がそう言って、安心して気が抜けた。

迷ったのも大冒険だったのだろう。王子君も姫も豪商の子供も、目をキラキラさせていた。うんうん。子供はこうでなくっちゃ。

隊長たちの子供は流石に疲れた顔をしていたけれど。

王子君は第一王子を見てニコニコ。そして姫と楽しそうに内緒話。

うんうん。平和だ。




そしてさらに後日だが、王子君たち ーーー ちびっこたちはチームを作って一緒に訓練するようになる。

その内容に俺たち大人が舌を巻き、新しい時代が来たのか…！と倣うようになるまでそう時間はかからなかった。